そこからの「男の勲章」劇場は、現実離れしすぎて文字に起こしづらい。
「○▼※△☆▲※◎★●ぞおらあ!」の勢いはそのままバットに乗り移り、いきなりレフトスタンド最前席に追撃ホームラン!球場全体が「え?」と呆気にとられるなか、一気に空気の変わったオリックス打線はそこから追いつき、そして同点の9回裏に満塁まで攻め立てたところで、また大下に打順が回ってくるのである。
自信たっぷりで打席に入る大下は「何か説明のつかないもの」を身にまとっている。言葉にすれば「勢い」とか「気合」としか言いようがないのだが、そういう目に見えないものほど恐ろしいものはない。広島から神戸に来た「勢い」のままホームランを打った熱量はまだ十分、この打席の彼の背中から「モワモワ」と立ち上っていたのである。
これは絶対打つやん、と私は確信した。
振った瞬間「うりゃー」と叫んでいたと思う。0-1から迷いなく弾き返した大下の打球はセンターの頭を超え、サヨナラタイムリー!一塁を回った男・大下は「立ち上がったイノシシ」のように両手を突き上げ、オリッ全選手が喜びを爆発させてそこに集まる!球場は思いもしなかった救世主の出現に興奮の坩堝と化したのである。
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