南 郁夫の野球観察日記(86)
祝・2021オリックス神戸開幕!花火ドンドーン!

2021年5月17日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)


待ちかねた、神戸開幕。大阪府知事の独自判断で5月の本拠地開催試合が無観客になってしまったオリックス・バファローズではありましたが、どっこい神戸は兵庫県!とはいえどうなの?とヤキモキしましたが、5月16・17日、ほっともっとフィールド神戸で組まれていた楽天戦は、人数制限付ながら予定通り行われました。無事、今年も神戸開幕。
神戸の試合は、昨シーズン9月の「THANKS KOBE がんばろうKOBE 25th」以来。中嶋監督で生まれ変わったオリックスをこの目で見ようと、両日とも熱い神戸のファンたちが詰め掛けていましたが、その観客の声を受けて新生オリッは堂々の連勝。しかもその勝ち方がすこぶる印象的だったのです。



1戦目は山岡の本来の快投と(シーズン序盤の得点力不足が)嘘のような活発な攻撃で B9−4E、2戦目は田中マー君の熟練の投球に抑え込まれるも、終盤唯一のチャンスを一発で仕留めた吉田正尚の逆転3ランで B4−3E、2位の楽天相手に堂々の連勝です。
2戦目、たまたまレフトスタンドにいた私の前方の楽天ファンのポテトを吹き飛ばした吉田のマー君からの一撃には、まさにまさたかに、震えがきました。名勝負です。すんげー。

単なる連勝ではなかった気がします。まず打線が躍動していました。外野手として復活した福田が「昔の一番打者」のように粘って球数を投げさせたあげく出塁して走り回り、二番の宗が動物的な野球センスで積極的につなぎます。





そして、三番には球界を代表する吉田正尚、そして四番には「昇天」杉本で返す形。(この青学の3、4番が17日試合終了時点ではパ打率ランキング1、2位!)


19歳の紅林はとにかく思い切りプレイさせて使い続けて(1戦目に駄目押し3ラン)、あとは若手とベテランをうまく配置しての、意外なほどの層の厚さです。



個人的には最後の最後に守りに入ったとき、外野に小田や駿太を、内野に大城を配置するベテランを使った「詰将棋」が好きです。これがまた「変えておいてよかった」みたいな場面がビシバシ来るんですよ。諸々含めて、中嶋監督の采配がいよいよ冴えてきたなあ、と思ったのは2戦目の終盤。

誰が見ても盤石の先発陣(防御率ランキング上位独占)なオリッの現状の課題は、平野が離脱(早く帰ってきて!)したところから始まったブルペン崩壊です。2戦目も、逆転したあとに8回の富山、9回の能見それぞれが崩れて再逆転されても全然おかしくない事態に。そこで監督は、8回は村西、9回はK-鈴木をブチこんで、場内はざわめきました。いずれも「大丈夫か?」と思わせる実績の乏しい若手だったからです。



でも、誰だって最初は実績ありませんわな。両投手とも「逃げずに思い切り投げ込んでこい!」とだけ言われて送り出されたはず。必死の形相でストライクゾーンに速い球を集め、なんとかかんとか危ない場面を「勢い」だけでしのいだ後、まるで「いたずらに成功した子供」のような顔で喜びに沸くベンチに戻ってきました。こうして選手は成長していくのですねえ。そう。オリッのベンチは湧き上がっていましたよ。



なんかこの神戸で「覚醒」した感すらある、中嶋オリックス。ダンゴ6兄弟の今年のパ・リーグは何が起こるかわかりません。ようやく、ようやく戦えるチームに生まれ変わったことを、初夏を濃厚に感じさせる美しいスタジアムで確信しました。
やはり空の下で選手とファンが一体となってやる野球は、素晴らしい!幸福な2日間でした。無観客の京セラ試合をなんで神戸に置き換えられないのかなあ?と、ものすごく単純な疑問です。

で。祭りの最後は、もちろん花火。神戸といえば花火です。1戦目は5回終了後の恒例「花火ナイト」。2戦目は試合後「Bs神戸大花火」が敢行され、なんと約2000発の花火が夜空に打ち上がりました。スカッとしました。この状況下で花火大会を行った関係者の努力に感謝です。ボイス・ナビゲーター神戸(かんべ)さん のアナウンスによれば「花火には昔から疫病退散の願いが込められていた」そうですから、その効果が期待できます!



さて。14日は開場前にオリックスの試合前練習をスタンドから撮影させていただきました。練習風景って大好きですう。試合より好きと言ったら言い過ぎかな。撮影はカメラマンに任せて、誰もいないスタンドで足を投げ出して、青空の下でのんびりそれを眺めるひとときは、最高の贅沢な時間でした。

グラウンドにいるのは、生活がかかっているプロのオトナたち。でもどこか少年が野球ごっこでじゃれているような空気も、あるのです。普通のオトナなら職場で働いている時間に。プロ野球の練習風景を見ていると、めちゃくちゃ野球が得意な小学生たちの「休み時間」を眺めているような、不思議な気持ちになります。「あの子、めっちゃ上手やなあ。当たり前やけど」なんてつぶやきながら。いつまででも、見ていられる。これぞ究極の野球観察かな、と。


次ページは、私がのんびり和んでいる間に、スタンドを駆けずり回って練習風景を撮影してくれた専属カメラマンのショットを、お楽しみくださいませ。




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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





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