南 郁夫の野球観察日記(35)
Bクラス独走!夏のオリックス、あれこれ…

2017年8月24日(文/南 郁夫、写真/トモ)


盤石4位の座にどっしり落ち着いてしまった、オリックス。今シーズンは総じて「あか〜ん」「いける?」のくり返し。5連敗のあと3連勝みたいなパターンのループ。もどかし〜い展開が続く。ファンも応援夏バテ状態で「クライマックス進出に向けてっ!」と球場内BGMが煽り立てても、「くぅ?」と公園でへたばる土鳩のような鈍い反応。今シーズンは終わってしまったのか?

それでも。道に裏返しに転がってたセミをつついたら「ジジジッ」と息を吹き返すよに、吉田まさたか君が「びっくり」するよなホームランを打ったりするから、あきらめきれない。8月のこの時点で、クライマックス進出の可能性は「ゼロではない」んでしょ?ゼロでは(誰に聞いてる?) 野球の夏は、まだ終わってはいない、はず。まだ暑いから。そんなオリックスあれこれ。

ちなみに。

オリックス球団は今年も秋に向けて「MISSION OCTOBER!」企画を敢行?しているが、得意の下克上も絶望のロッテなんかはどうやってファンにアピってるのか?と球団HPを見てみると…「からあげ祭り」て! 素晴らしい。野球関係ないし。謎の「魚」の次は「からあげ=鳥」か。やはりこの球団の「とぼけ具合」は秀逸である。「魚」グッズ、欲しい(第二形態)。チーム名書いてなければいいのに…


●吉田まさたか君の苦悩



先日NHKで吉田くんの密着取材番組が放送され、胸を打たれた方も多いと思う。あれだけ期待した吉田くんが怪我で3ヶ月も出遅れるなんて、ファンもがっかりだったが、そりゃ本人が一番苦しかったろう。番組では相変わらず農民のような彼の困ったような表情から、そのあたりが寡黙に伝わってきた。

それでも彼は「ホームランの悦楽」という感覚のみを大切にして、雑音を排して他に類を見ないスイングを変えることなく、復帰を果たしたのである。彼の野球初期衝動は、ボンズあたりのメジャーリーガーのホームラン。日本のプロ野球は眼中にはないのだ。そこはあくまで譲らないところに、夢がある。

7月10日の日ハム戦の1回にいきなり飛び出した復帰後第1号ホームランを、この目で見た。京セラの上段スタンド(あれを5階席とか言わないように…どこから数えてるねんちう話)にスパイ映画の「ワイヤーガン」のように突き刺さる、その弾道にスタンドは息を飲んだ。私の真後ろで見ていたマレーロの恋人は「ワオ!」と叫んだ。やはり、吉田くんは特別な選手である。あんな直線なホームラン弾道は見たことがない。

どうでもいいが、マレーロの恋人は恋人の打席以外は「ずうっとパズドラをしていましたっ」。

復帰後、長打力はもちろん外角を流し打つテクニック、けっこうな走力も見せつける、吉田くん。実力的には着実に進歩していることに安堵しつつも、スイングの後に腰を押さえる仕草に周囲がドキッとしてしまう、吉田くん。なんとかその球界の宝である天然記念物・フルスイングの保護・保持に努めていただきたい。





●山岡たいすけ君の自信



開幕以来ずうっとローテを守っている、山岡くん。彼の面構えやマウンドさばきを見ていると、他のどのベテラン先発投手よりも、明らかに自信たっぷりである。その根拠は、彼の内面にあるのだろう。

木製のデッサン用人形のように関節という関節をフル活用するダイナミックなフォームから投げ込まれるスライダーで異様な頻度で打者のバットをへし折っては、マウンド上で「ふっ」と笑う(ように見える)山岡くん。そんな彼がルーキーだとは、とても信じられない。ていうか、誰も彼がルーキーだとは思っていないとも言えるが。

何がすごいって、ルーキーで初先発から6試合も援護なしで勝てなくても、自滅せずにそれを乗り越えたところだ。防御率は3点台を維持。強いチームなら何勝しているんだろか? と申し訳ない気持ちにもなるが、彼の見据えるところはそんなレベルにはないのだ。打たれても、負けても、決して引きずらない。久々にオリックスでメンタルの強い若者を見ている気がする。間違いなく、近い将来のエースの登場である。


●T-岡田の打順乱高下



たかが打順。されど打順。先日、仙台でT-岡田がコボスタの右翼席に美しい放物線を描いた場に居合わせたとき、シーンとする内野スタンドのあちこちから「で。どうしてT岡田が7番なの?」という声が聞こえてきた。私も激しくそう思う。客観的に見れば、そうなのである。ホームラン数はチームトップで、今年は30本を軽く超えそうな勢いである。打率も特に低いわけではない。

彼のことだから、選手会長ということで、いろいろ思い悩んでいるのかもしれない。夏場に調子を落としたのは痛かったが、それでも彼は「パ・リーグTV」で特集が組まれるほどの「(ソロ)ホームランアーチスト」である。指導者にとってはいろいろ突っ込みどころのある選手なのだろうが、2番はないだろう、2番は。1番もどうかと思うが。

アーチストにはそれなりのリスペクトを!「せめて…6番で!」(失笑)、彼にはホームランだけを期待したいと思う。それがたとえ(たまたま)ソロであろうとも。


●そして、光は見えとんのか?



今年もいろいろと投打に誤算があったというか、マジで誤算だらけのオリックス。それでも4位で頑張ってはいるが、現状のスタメンを見ていると、途中加入の外国人選手とベテランのしぶとい頑張りでなんとか現在の位置をキープしている感は否めない。うーん。。4位キープもいいけど、これでフィニッシュでは来季以降に向けての「予感」というものが感じられないのも事実。

3位とも5位とも10ゲーム近く離れている現状を考えれば、9月は「U25」スタメンを組んで経験を積ませたら面白いと思う。駿太 (24歳)、吉田正(24歳)、武田(23歳)、大城(24歳)、宗(21歳)あたりを中心に。我慢して。我慢して。やはり彼らは、一軍の経験を積むしかないのだから。
え? 無理? 大人の事情でて? 大人て、誰やねんー。

もちろん私は、ロメロや小谷野、ナカジのさすがの活躍も嬉しい。嬉しいのだけれども! ちう話なのである。とにかく、シーズンはまだまだ終わってはいない。野球観察は、続く。






<関連記事>

オリックス、スタートダッシュ!ま、まさかの快進撃!
http://kobe-kspo.com/sp063.html

「KANSAI CLASSIC 2017」近鉄VS南海、阪急ブレーブスを観に行ってきた
http://kobe-kspo.com/sp065.html

チームを支える人たち オリックス広報担当・仁藤さん
http://kobe-kspo.com/sp066.html

交流戦で巻き返し!オリックス6月反攻へ
http://kobe-kspo.com/sp067.html

オリックスファーム、舞洲サブ球場に行ってきた
http://kobe-kspo.com/sp068.html

お魚の恋人 ロッテ戦で花火見物
http://kobe-kspo.com/sp070.html

東北楽天、Koboパークに行ってきた!
http://kobe-kspo.com/sp073-1.html




南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





Copylight(C)K!SPO All Rights Reserved.