南 郁夫の野球観察日記(28)
オリックス、スタートダッシュ!ま、まさかの快進撃!

2017年4月30日(文/南 郁夫、写真/トモ)


オリックス、まままま、まさかの快進撃である。開幕3連敗で逆走を始めたときには「あ」と白目をむいたが、その後は「え」と首をかしげる豹変ぶり。ま、私は開幕当初に「100勝43敗」と予想(予言)したので、うううう、うろたえてはいないのだが、去年とは別人のような選手たちの生き生きした様子を見ていると、心浮き立つ4月である。

なんといっても、野球観察者インタビューで彼らが宣言してくれたとおり、T-岡田安達がチームを引っ張っている姿が、素晴らしい。生え抜きの二人が前面に立つことによって、やっと「わしらのチーム!」という雰囲気が出て、チームがガラッと変わった。何よりも二人の「勝ちたい」という気持ちが伝わって来るのが嬉しい。



T-岡田は… T-岡田史上初めて?4月から絶好調。打率とホームランを両立させるという高い次元の実力をいきなり発揮。4月25日に神戸で目撃した決勝ホームランは、スタンドがなければ須磨海岸まで飛んで行ったよねー、というすんごい当たりであった。状況に応じて軽打と強打を使い分けれるのが彼の特質だが、それに「凄み」が加わってきた。

今年のT-岡田には「オーラ」がある。それは、田口壮・二軍監督の新著「プロ野球・二軍の謎」(幻冬舎新書:必読)で田口さんが指摘しているように彼に「最も欠けていたもの」だったのだ。それが今年は、ある。昨年の二軍落ちの悔しさをバネに一皮むけた選手会長は、他球団の脅威となっている。





投手陣は… エース金子の絶好調で、全体に弾みがついた。志願して続投・完封するなど、やはりエースの姿勢はチームの士気に影響する。加えて「8回の男」黒木が投球後に両足が飛び上がるほどの勢いでボールを投げ込む姿が、オリックスの今年の象徴か。ルーキーとはとても思えない性根の座った投げっぷりは、なんだか昭和の大投手を連想させるのだ。



そして… 私が開幕時コラムで最大のポイントに挙げた「駿太の覚醒」が、現実化しているではないか! 打撃の欠点(ヘッドが外から出る)を修正するべく悩み抜いていた駿太が、ようやく「何か」をつかんだ。質の異なる打球が飛んでいる。4月27日の猛打賞で久しぶりにお立ち台に立った顔がなんだか大人びていた、駿太。7年目とは言ってもまだ24歳。足も速いし守備はエクセレーントだし、大いに楽しみである。







加えて、何よりも快進撃を象徴しているのが、切り込み隊長として定着した宮崎のサプライズ・ブレイク。私はたまたま参覲交代で江戸に赴いた際(虚言癖)、東京ドームで彼の思い切りのいい2本のホームランを目撃し、ファイターズのファンとともに「唖然」とした。あの二軍番長の宮崎が!「しゅっ」としたオリックス選手の中にあって、野性味のある彼の「地べたを這うような」キャラは際立っている。

今だから言うわけだが(!)昨年の田口さん取材で神戸サブ球場を訪れた際、二軍の選手たちの学生みたいなノリに「そんなかんじなのかー」と思っていた私に、唯一ギラギラしたものを感じさせたのは、宮崎の切迫した「目」であった。這い上がるべくして、這い上がってきた男・宮崎。ほとんどの主力選手より年上の彼の、なりふり構わぬ必死こいた姿勢こそ、今のオリックスに一番必要だったものであろう。



その宮崎は、昨年二軍に落ちていた小谷野から多くを学んだらしい。大ベテラン・小谷野もまた怪我から復帰して、今年は不動の3番打者として百戦錬磨の技術を見せつけている。「糸井ロス」を忘れるほど今年のオリックスは実にうまく噛み合っているのだが、それを支えているのは、宮崎をはじめ武田や小田、大城、鈴木といった人材を供給し続ける二軍の存在であることも見逃せない。

「福良ー田口ライン」で昨年から風通しが良くなった、オリックスのチーム編成。これが結実しているのが、今年のスタートダッシュである。誰かが故障したり抜けたりすれば、チャンスを待って研鑽していた誰かがチャンスを掴んで、離そうとしない。一軍も二軍も、目の色が違う。ようやく、オリックスに「実りの時」が訪れようとしているのかもしれない。

とにかく。今年のオリックス・バファローズからは目が離せない。ライブで見れなかったときは注目シーンをパ・リーグTVでチェックするのが野球観察者の常なのだが、今年はそれが連日の深夜に及び、目が潰れそうである。昨年まではそんな苦労はなかった(きっぱり)。毎晩、平野の最後の一球を確認してから寝ているような気がする。

今年のオリックス・ファンは大変だ。もちろんそれは、うれしい悲鳴である。きゃー。









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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」


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