南 郁夫の野球観察日記(13)
「オリックス・ブレーブスがあったころ」

2016年9月5日(文/南 郁夫、写真/トモ)



数々の復刻ユニフォーム試合でこれまでも話題をさらってきた、オリックス・バファローズ。阪急・ブレーブスはやったし、オリックス・ブルーウェーブもやったし、近鉄・バファローズも。
さすがに今年は(いろいろと斬新すぎる企画ユニがあったし)、もうネタないよね?と思っていると、不意打ちのようにやってきたのが、まさか、そこ? という「オリックス・ブレーブス」の復刻ユニときたもんだ。
予想もできなんだ。ご存知のように、我が栄光の阪急ブレーブスは88年シーズン終了直前に、オリックスに衝撃の身売り。その後、神戸に移転して「ブルーウェーブ」となるまでの89-90年の2年間のみ、あのブルーウェーブカラーのユニに胸がBravesという(今から見たら)違和感ありありのユニフォームで、そのまま西宮球場で戦っていたのだよねえ。結構強かったし。

西宮球場… 私は今でも阪急西宮ガーデンズに行くたびに、今自分が立っているのは福本の守備範囲ではないのか? などと思ってしまう。若い者にそう言っても「はあ?」(右上がり)てなもんだが。目をつぶれば、球場エントランスの並木や白雪の看板、一塁側スタンドに突っ立っていた巨大な競輪用見張り台、グラウンドを駆け巡るクリーム地に赤の阪急の選手達の幻影、そしてガラガラのスタンド…常軌を逸したほどありありと思い出せる。
うん。ガラガラ。「今日ほんとに試合、あるんですか?」と試合前の球場入り口(角の食堂のあたり)で何度、人に聞かれたことか。
時代は、変化せざるを得ない。球団は消滅し、球場まで他のものに変わった。今では阪急と阪神が同じ会社だ。誰も先のことなどわからない。目の前にプロ野球があるだけでも、ありがたいと思わざるを得ない。




というわけで、9月3日土曜日。「蒼き勇者の閃光」と銘打たれたオリックス・ブレーブス復活ナイトゲーム@ほっともっとフィールド神戸に「勇んで」駆けつけた、私。スタンドは明らかにそれとわかるオールドファンも多数いて、超満員。
結果から言えば、試合開始を遅延させた豪雨の影響で(?)ディクソンが「大乱調」。オリックスがまあ負けた(というか大敗)わけではあるが、相手ファイターズの「寿司パラダイス」レアードの三連発に唖然としたり、T-岡田とナカジのホームランが飛び出したりで騒ぎどころは多々あり、何と言っても懐かしいユニに思い出も止まらずで、しばしば落ちてくる雨もまた楽しきかなの素晴らしい夜となったのである。雨なのに花火上がったし。

は、白状しよう。負けたのに上機嫌なのには、訳がある。
今回の復刻試合の公式球に「80th Annivercery Braves」の特別印字があることを知った私は、それがどうしても、どーうしても欲しかったのだ。8,500円の公式球付き指定席券を出せばもらえるが、それは違う。違うだろう。この試合で座ったのは、ファールボールを取る可能性がゼロとは言えない、1塁側内野指定席。「絶対に!ファールボールを!取るっ!」と、その確率を考えれば「アホか・・」な野望を宣言して、右打者のたんびに他の日常業務ではあり得ない集中力で身構えていた私に奇跡が起こったのは、5回裏。バッターは伊藤光であった。

0-2と追い込んだファイターズ・高梨が投じた3球目を、伊藤がカット。打球は私のはるか上を通り越して、1塁側2階席へ消えた…と思ったその直後、ボールがあっという間に跳ね落ちてきて、なんと間近の椅子(雨で観客が避難していた空席)に「ガツン_ッ」と着弾。幸運にもその椅子の下で「どうぞ」とばかりにピタッと静止したのだ! そして私の同行者が、今まで見たこともない迅速な動きで身をさっと乗り出し、難なくこの貴重な公式球を拾い上げたのである!
試合進行に全く関係なく、優勝が決まったかのように大騒ぎする私と、同行者。半笑いの周囲の観客。本当にファールボールを取ってしまった! 願いは叶う! 雨でも席を立ったらダメやねんで! ていうか、すごくないですか? 狙って取るなんて!
呆然と見つめるボールには、もちろんNPBロゴの下に特別印字。そして、こねた土の跡と、高梨が爪で引っ掻いた跡。そう。公式球は新品じゃダメなんだよなあ。あは。あはは。あは。




話題が外角に大きくそれてしまった。

さて。オリックス・ブレーブスの復刻ユニなのであるが、遠目に見れば胸のBravesはわかんないので、はっきり言ってオリックス・ブルーウェーブが戻ってきたようにしか見えない。しかも舞台は「グリーンスタジアム神戸」の天然芝。西野が大島に見えるし、川端が小川、背中を向けた大城が谷に見える(フォルムがね)。懐かしい、というよりは「しっくりくる」のだ、このカラーリングが。ブレーブスの復刻というよりは、ブルーウェーブの再来。今の選手にはこのユニの方がイメージ的に全然合っている気がしてならない。今年初めてまともなユニを見た、とまで言ったら言い過ぎか。

このユニのまま胸を黄色でBuffaloesにすれば? というか、いまさらだけどなんでBuffaloesなの? と昔の古傷を蒸し返して妙な気分になるのが、復刻ユニ試合の複雑なところでもある。




で。公式球特別印字に「80th Annivercery Braves」とあるように、今回のイベントは同時に「阪急から数えて80周年」という趣旨もあるそうで(じゃあなんでBuffaloesなの? しつこいですか?)それを記念して、ちょっと驚くような貴重なグッズが多数販売されているのも、悩ましい。悩ましすぎる。全部欲しいが私にも危ういが常識というものが。オールタイムロゴがプリントされたタオルやトートバッグをちまちま購入したが、メインはこれ。




私が歴代ユニの中で「最もかっこいい」と思っていた、それこそレアな、60-61年型がプロモデルで復刻されたのだ。マジでびっくりである。企画者に「いいすね」を100万個あげたい。普通の昔のブレーブスとの違いがわかりますか? わかりませんね? 縦に赤ラインが入っているのは、この時期だけなのです。本家アトランタ・ブレーブスと同じなのですね。口調がおかしくなってますね。袖にはこれまた嬉しい、初代勇者ロゴ! 結構、け・っ・こ・う、お高いんすけど仕上がりはさすがプロモデル。もう他の応援ユニは、いりません。

というわけで、満足度100%の今回の企画。球場のお客さんも大いに楽しんでいたし(雨でもほとんど誰も帰らなかった)、大成功ではなかろうか。9月11日に京セラドームでもう一試合開催されるので、ぜひ、何度見てもしっくりくるオリックス・ブレーブスのユニの選手達を球場で見ていただきたい。
今回のユニに関しては「復刻で終わらせて欲しくない」というのが、私の結論である。ブルーウェーブ基調に胸はBuffaloesということで。間違えたふりしてBravesでも?(しつこい?)

そして、来年はぜひ、西宮球場を復刻してください。(真剣)




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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





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