南 郁夫の野球観察日記(4)
スペシャル企画・田口壮さん!ロングインタビュー(後編)

2016年5月29日(取材・文/南 郁夫)



お待たせしましたー。オリックス・田口二軍監督のインタビュー、後編をお届けします!


−−昇格が決まった選手に「明日から一軍だ!」と声をかけるのって、二軍監督の喜びですよね?

「最初は、そう思ってたんですけど…(入れ替えが多すぎて)慣れてきちゃいました(笑)
それより、上がってすぐ落ちてきた選手へのケアに気をつかわないと、ですね」


−−落ちてきた一軍レベルの選手にはどのような指導を? T-岡田選手やコーディエ投手は田口さんがよみがえらせました。

「いえいえ。技術的なことはコーチにまかせてます。T-岡田は下山コーチがフォーム修正しただけですね。
とにかく選手の性格や状況を見極めて、それに合った言葉をかけてあげたいな、と。
コーディエはねえ、精神的なことだけだったんです。ある日、僕のところに通訳つけずに直接来てくれて、わーっと、心の中を吐き出してくれたんです。本人が“苦しい”と言えたから、よかったですね。そこから、抜け出せたんです。“俺の友達、壁しかいない”って最初言ってましたから。精神的に相当、苦しかったんだと思いますよ。
外国人選手の場合は、(日本の環境を)受け入れる意識を持てるかどうか、これがすべてだと思います。コーディエはもう、大丈夫だと思います」

*英語ができてメジャー経験もある田口さんは、外国人選手にとってありがたい存在だろう。現在、T-岡田選手もコーディエ投手も、見事に一軍に再昇格して活躍している。


−−「二軍監督の毎日」って、どんな感じですか?

「6時に起きて7時には家を出て、ここ(サブ球場)に7時半に着いて。8時45分に選手の(ウォーム)アップが始まります。試合があれば試合が終わって3時半、夕方5時までまた練習。6時ごろまでいろいろと…家に帰るのが7時かな。
晩ごはん食べながら一軍の試合をテレビで見て(選手入れ変えが起こりそうな)“変な試合”だったときは、夜10時ごろからずっと携帯電話、持ってます(笑)」


−−(一軍監督の)福良さんとはツーカーですよね?

「ええ。福良さんには(ブルーウェーブ)入団当時、野球をいちから、教えてもらいましたから。追いかけまわしては、野球談義をしてもらってましたね。メシ代、いくら払っていただいたか、わからないです(笑)」

*インタビューの翌々日、練習で元気いっぱいだった伏見選手が一軍に上がって出場していた。「誰かおらんか?」「伏見がいけます!」なんて携帯で会話があったのであろうか?(妄想)




−−田口さんの現役の最高の瞬間って、どれですか? メジャーのプレーオフでのホームランですか?

「うーん…これ、とかはないですね。このプレイ、とかは。
最高の瞬間は…“ものごとが終わる瞬間”ですね。日本シリーズでジャイアンツに勝った瞬間、メジャーでワールドシリーズが終わった瞬間…」

*名言いただきました。野球選手の最高の瞬間は、やはりチームが頂点に上り詰めることなのだ。


−−アメリカでいちばん感じられたことは、なんですか?

「メジャーの選手たちって、もう…プロという仕事の域を超えてるなと。集中力がすごい。切り替えがすごいんです。なにかもう、エンタテイメントの世界、と言いますか。やるときはやるという、その底力が違います」


−−ブログもまた書いてほしいです。マイナー時代のいきいきした描写が、面白かったですから。

「なかなか、時間はないですが。でも、マイナーのほうが、ネタ満載ですからね。
どんな世界でもそうでしょ? こーんなことが、起こっちゃうんだあ!という話がありますよね、マイナーのほうが。ここ(オリックス二軍)でもねえ。書けば、おもしろい話いっぱいですよ」

*「書ける」野球選手でもあった田口さん、そのコラムをまとめた書籍は野球ファン、必読である。


−−田口さんが書いておられたような、マイナーリーグの雰囲気、日本でもほしいですよね。

「選手もね。イニング間とかプレイ間とか、スイッチ切ってもいいと思うんですよ。また入るなら、ですけど。
野球って、ファンに近いのがいいですね。マイナー時代、いちど僕、アウトカウント間違えたんです。それから外野スタンドの敵チームのお客さんがいちいち、アウトカウントを僕に大声で教えてくれまして。僕もそれにこたえて指を1本、2本立てて“わんあうとー!つーあうと!”っ叫んでね。盛り上がりました(笑)」

*田口さんはアメリカに行ってから、スタンドの観客や奥様に手を振ったりできるようになったという。日本ではとてもできなかったらしいが。


−−最後になりましたが。久しぶりに、田口さんが活躍されていたころのような、盛り上がったオリックスを、見たいです!

「見せましょう!」
「見せたい、とか言ってたらダメなんです。こういうことは。見せます!」

*肯定的な言葉を宣言する。これが田口さんの身上である。T-岡田選手もこれをみならって(たぶん)、ヒーローインタビューではポジティブ発言をくりかえすようになった。


−−そして、どんどん一軍に「定着」する選手を、上げていただきたいです。

「上げましょう!(笑)」


−−今日は本当にお忙しい中、長々とありがとうございました。

「ありがとうございました」




<インタビューを終えて>

「自分は前に出るべきではない」
日米球界のレジェンドでありながらそうおっしゃる田口さんの真摯なまなざしからは、「チームの将来」を見据えた、プロフェッショナルな広い視野が感じられた。そして日米にわたる活躍により野球の(というより人生の)さまざま局面を経験した田口さんの、選手たちを見つめる目は厳しくも、温かい。

去年はテレビの仕事の合間にフルマラソンに2回出たとおっしゃる、田口さん。若い選手たちと一緒に汗を流す引き締まった姿は現役感満点であり、そのさわやかな笑顔(と白い歯)も相変らず。新しい監督像として、球界に新鮮な風を吹き込んでくれるだろう。

田口さんの新しい“ベースボール・ジャーニー”は、始まったばかりである。

二軍監督にとどまらず、オリックス球団の首脳陣として未来を見据える田口さんの言葉を聞いて、このチームがまたパ・リーグの主役に躍り出る日も近いだろうと、長年のファンとして確信が持てたインタビューなのであった。

さて。

実はこの日はたまたま、新外国人選手・クラークの入団発表日。隣の“ほっともっとフィールド神戸”で記者会見をしたあと、急遽、インタビュー場所のサブ球場でお披露目を兼ねたバッティング練習をすることになってしまい、なんとこのインタビュー中にクラーク選手が到着してしまったのだ。

にもかかわらず、「新外国人選手を待たせて」こんな私のファン丸出しの質問にていねいに答えてくださった田口さんに、感謝しきりである。本当にありがとうございました。

その後、クラーク選手は監督にごあいさつ。さっそくユニフォーム#44に着替えての打撃練習を開始。「かーん」「かーん」という打球音を聞きながら、このミッション、無事終了としよう。

オリックス・バファローズ広報の仁藤さん(2006-2010 投手)、二軍マネージャーの田中さん(1996-2001外野手)、お世話になりました。二軍練習をグラウンド上で最初から最後まで見る、という野球観察者としては望外の経験もさせていただきました。

そして、私にいちいち挨拶してくれた、息子のような年齢の選手たち、なんだか“ブルーウェーブ感”満点のメンバーがそろった明るいコーチの皆様にも、本当にがんばってほしいです。





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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」


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