南 郁夫の野球観察日記(26)
平野のことが心配で!WBC強化試合を観に行ってきた、の巻

2017年3月8日(文/南 郁夫、写真/トモ)

3月5日(日)に京セラドームで行われた、WBC強化試合ダブルヘッダー「西武」対「キューバ」、「オリックス」対「侍ジャパン」を観に行ってきた。
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日本がオリッに5−3で最終回逆転勝ちするという、送別会?壮行会?にふさわしい展開となった、この日。うん十年ぶり?で全国地上波放送されたオリックスは、立派にホスト役を果たした結果となった。よかった、よかった。

なんせ、この日の日本軍の継投は「藤浪ー平野ー岡田ー増井ー松井ー千賀ー宮西ー秋吉」ときたもんだ。こんなメンツがすでに仕上げてきてるのだ。そんなの打てるわけない中、藤浪のお家芸「初回乱調」に助けられなどして3点取ったオリッ打線は、上々だったのではなかろうか。その初回には西野、安達の魅力の1・2番コンビが機能して二人とも盗塁を決めるなど、課題だった機動力の片鱗も見せてくれた。

伊藤光は「昔からやってますが何か?」みたいな顔でサードを守っているし…。



オリッ投手陣の方は、初回こそ失礼に当たらぬ「顔見せ」エース金子だっとはいえ(さすがの無失点)、あとは二年目の近藤→ルーキー澤田→新外国人ウエストという、初期オープン戦仕様の「全く飾らない」継投。それで豪華絢爛・尾頭付のジャパン打線を相手に十分試合は作ったのだから、意外というか満足できる内容であった。

特に、大阪桐蔭で藤浪の控え投手だったというルーキー澤田は、「小太りの怪しげな手品師」のようにわけのわからない変化球をわけのわからないタイミングでポンポンと繰り出し、テレビでしか見たことがなかったであろう球界の超有名打者たちを幻惑。2回を見事に零封して、痛快の掘り出し物。

近藤は鈴木誠也にボール球を3ランされるも(去年からどんだけ神に奉納してるねん!オリッ投手陣、ていうか若月くん!)その後は球威のあるところを見せてくれて、今年こそ期待大。ウエストはボークで日本審判の洗礼を受けて動揺したのか、秋山に決勝打を浴びたが、まあまだオリエンテーション中。適度に日本軍を盛り上げたオリッ投手陣に「よくやった」と言いたい。



もちろん日本軍のメンバーは、さすがに存在感がある。見ていてそのプレイぶりは楽しくはあった。ただ…なんとなく監督のテンパりが伝染しているのか、真面目な必死さばかりが伝わってきて息がつまる。それぞれ一流選手なんだから、監督とか球界の事情のことはほっといて、もう少しのびのびやればいいのにな、と思う。第1試合のキューバの選手を見習って。

そう。この「オリックス対日本」に先立って行われた「西武対キューバ」でのキューバ選手の立ち居振る舞いに、私は感銘を受けたのだ。練習試合と割り切っているからか、キューバの選手たちは全く見事に「頑張らない」のだ。自国の主要な選手はみなMLBに吸い上げられてベテラン(公務員)ばかりというチーム事情もあるのか、なんだかキューバ選手からは大人の余裕が感じられる。

たとえばキャッチャーがボールを大きくそらしたら、日本選手なら紅白試合であろうが「転がった500円玉を追いかける勢い」で取りに走るが、キューバのキャッチャーはどうせ間に合わないと思ったら、結構のんびり歩いていく。これがなんだか、新鮮。万事がこの調子なのだ。がしかし、気を抜いているというわけではなく、ときおり目がさめるような身体能力は見せる。

感銘を受けたのは、内野手の「ボール回し」だ。キューバのボール回しは、笑っちゃうほど速い。恐ろしく、速い。取る前から投げてるみたいな、すべてが「あやとりの糸」のようにつながった、雑技団みたいなボール回し。それを「こんなもん、生まれる前からやってるし」みたいな眠そうな顔でつまらなさそうにやるのだ。

ああ、手首と足首の柔らかい人たちがボールで遊んでいる。それがキューバ野球。

正直、0−5で西武に完敗したキューバの実力はよくわからない。次々と出てくる投手は全員、ボールはゆるいしコントロールはばらばらで、観客も西武の打者も困惑するばかり。彼らにしてみればあくまで練習で実力ではないのかもしれないが、とばっちりで肘に死球を受けて骨折し開幕絶望となった森くんが気の毒でしょうがない。

ライバル目線で西武を観察するに、背番号3となった浅村がしっかり振れていて中軸の風格を示しているし、山川はおかわり君にしか見えないし(本物はどうしてる?)、栗山や渡辺などベテランはいい仕事してるし、やはり侮れない存在だ(オリッに侮れるチームはないけど) 特にルーキーの源田が攻守ともに光っており、ついにこのチームの遊撃手問題は解決するのかもしれない。

というわけで。第1試合が12時開始で、第2試合が終わったのが22時過ぎ。マジで10時間以上も試合と練習を眺めて、買ったばかりの選手名鑑もフル活用して、私はもういつでも開幕オッケーですよ、監督!
え?まだオリッ、これからオープン戦なの? うーん、まだちょっと、遠いなあ。

WBC?そらテレビでやってたら見るけど・・。
WBCよりYBCの(リッツパーティー改め)ルヴァンパーティーの方が気になる、昨今。


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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」


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