南 郁夫の野球観察日記(11)スペシャルインタビュー <後編>
マック鈴木さんの今。野球少年たちへの想い、我が子への想い。

2016年8月7日(取材・文/南 郁夫)



神戸の英雄であり、MLB日本人選手の元祖パイオニア、マック鈴木さんのインタビュー、続編をお届けします!

−−今、野球教室で子どもたちを指導してしておられます。直接、教えてみていかがですか?

「面白いです。いま6歳の子が最年少なんですが、その子が高校野球出るのが目標とすれば、10年は関わるわけじゃないですか。こっちもしっかりしないといけないし、成長していかないと彼の変化に対応できないですしね。ただ週に1時間野球だけ教えて「また今度なー」っていうわけではないですから。子どもらの目標を僕も彼らと追いかけるという、ね」


−−マックさんの野球教室で、子ども達にどう成長してほしいですか?

「うちの教室に来てくれてる子は、珍しく学習塾にはほとんど行ってないんです。それなりの目標は立ててあげないとと思っています。教室に来た当初は人の目を見て話せなかった子が、ちゃんと目を見て話せるようになったとか、学校の成績も上がりました、とか聞くと嬉しいですね。そっちの方が大事でしょ?プロ野球選手になる確率は低いけど、野球を通じて子どもの生活態度を変えてあげれる可能性は高い。ご両親にも受講料払ってよかったなと思ってほしいんです。今後はそこに英語教室も入れていきたい。10年後に少なくともその子は、英語が話せるんですよ。野球がダメだったとしても」

「野球から読解力と観察力を身に付けてもらいたいんです。そしたら、勉強もできるはず。人の言うことの1を聞けば10を知る子になってほしい。野球やってるときでさえ注意力散漫な子もいるから。試合の2時間3時間どころか、目の前のことに集中できない子もいるんです。そんな状態で監督・コーチが頭ごなしに何言ってもダメでしょ。まず話聞ける子になってほしいと思ってます」

「話が聞けない子にはね、「俺とお前入れ替わろ」と言うんです。「お前が話してるとき、俺がまったく聞いてなかったらどうや?」「いやや」「そやろ!そんなら、やめてくれ」とね。お前がいつまでも野球うまくなれへんかったら、ご両親お金出してくれへんようになるやろ? 教室やめなあかんやん。そしたら俺とお前、もう会われへんやん。だから集中してくれよっ、て言えばわかってくれますよ。困るんが、そんな話してたら親がネット越しに自分の子を叱るんですわ(笑)。親は自分が恥かいてると思って怒るんですよ。それやったら子どもをそういう風に教育した親が…ていう話でしょ」




−−マックさんから見ると日本の子どもというか日本人は…

「パーソナルスペースが違いますよね。(隣接テーブルで騒いでいる少年グループを見ながら)空いてるのに、わざわざ人の真横に座ってくるとか、ありえないでしょ(笑)。観察力がないから、周囲が見えてなくて危険察知能力もない。僕なんか、アメリカで怖い目にあったことないですよ。喧嘩はしたけど(笑)。英語だけ話せてもあかん。そういうことって子どもにどこかで誰かが教えないと、と思います。大事でしょ。生きてく上で」


−−日本にいて、ご自分が異邦人みたいに感じることがあるんですか?

「ストレスは感じますね。僕、もともと、はっきりもの言うんで外国人やなあと言われてたんです。それは親父の教育で、あかんもんはあかん言いなさいと。高校で期待されて投げさせられ過ぎて、ひじが張ったんです。そのときにはっきり監督にそう言うと、3週間干されましたからね。アメリカ行ったから?って言われるけど、はっきりもの言うのは、もともとで」


−−最後に、マックさんの今後ということになりますと?

「もちろん、野球教室の仕事にやり甲斐を感じているので、しっかりやっていきたいです。日本はいろんな面で暮らしやすいんですけど、子どものこと考えたら将来的に住む国としてはアメリカかなあ。グリーンカードあるしね。具体的にはルーキーリーグのコーチとか。遠征ないし、昼には仕事終わりますから。そんな余生もいいかな〜と(笑)。いずれにせよ、選択肢が二つあることはありがたいです」

−−お忙しい中、ありがとうございました!


…と、終わりかけたものの、もうすこし質問。
−−オリックスファンの私としてはどうしても、ダイエー「1-29」事件(※)など2003年あたりのことを聞きたいんですが。
※2003年8月1日、オリックス1対29ダイエーの試合。先発投手はマック鈴木。

「あの試合ねえ…僕が9回投げたら10点で収まったはず(笑)。まあ、僕がいた頃のチームの雰囲気は暗かったですね。外から入ってきた僕と山崎武司さんがおらんかったら、もっと真っ暗だったでしょう。最後の3年目のシーズン前、あるコーチの言うこと聞かずに「下で調整しときます」て言うて二軍行ったら、そのままずっと二軍でした(笑)。キャンプ地の高知の街で仰木監督に遭遇して挨拶したら、「お前誰やったっけ?」ですからね(笑)」

「二軍時代はねえ、地方球場から宿舎まで10キロくらいの道のりを岩さん(投手仲間の岩下修一さん)と旅番組的に歩いたりね。楽しかったですよ。自然の中で、鯉とかおるんですよ。シーズン中も、後輩とつるんでねえ(笑)。うん。なんか楽しかったなあ。でもその3年目はさすがにもう、アメリカに帰る気でいましたね。僕の場合、アメリカに帰ればええわという感覚なんですよ。家もあるしね」




ここから具体的な質問をしすぎて抱腹絶倒の雑談が続く。残念ながら、個人名連発で、これ以上はキッパリ書けない内容ばかりである。マックさんは、こちらが喜びそうな話題を次々に繰り出してくれる、頭のいい優しい方なのである。私の脳内では、すっかりあの歴史から葬り去られた「石毛ーレオンー伊原時代」の斜め背番号ブルーウェーブ(ユニフォーム復刻希望!)の、愛すべきトホホな記憶が止まらなくなっている。あぁブラウン、オーティズのエラー博物館・・・

我慢できないので、ザッピングで雑談の一部をどうぞ。「茶髪やなくて金髪…」「名古屋から出れなく…」「マック、アカサカ…」「タクシーで18万…」「昼の1時過ぎに海で…」「乱闘の最中にバット磨いて…」。わけわかりませんね。マックさんの登板日はなぜか?乱闘騒ぎが多くて、特にそこらへんの具体的描写になると俄然活き活きするマックさんの姿に、大いに笑わせていただいた。

はっきりもの言うので誤解され続けてきたという、マックさん。例えば取材で「ドミニカ行ったら(日本ハム・ファイターズの)大谷クラスの球投げる少年がたくさんいますよ」と言えば、「大谷君レベルの投手は掃いて捨てるほどいる」(2012年12月1日スポニチ)と書かれてしまうといった具合。
「掃いて捨てるなんて、言うてへんし。もうええわ〜ほんま」と言うマックさんのイタズラっぽい笑顔のスケールの大きさに比べたら、日本の揚げ足取り文化のなんと貧困なことか。

往年のマウンド上の印象で、ふてぶてしい「ちょっと怖い」印象を持たれがちだが、実際のマックさんは、にっこり笑顔とつぶらな瞳、ゆったりしたリズムの身のこなし、すこぶる速い頭の回転で繰り出すトークが魅力的な、まさにメジャークラスの紳士である。

マックさんの魅力は、キラキラした瞳で相手の心に清々しいストレートを投げ込んでくるその正直さ、そして「長いものに巻かれない」合理的な独立精神だ。カテゴリー:外国人選手である。それだけにいろいろと(特に日本社会では)誤解されやすい面もあるのだろうが、マックさんは常に逃げずに、ひょうひょうと、そして堂々と存在している。そのたたずまいが、かっこいいのだ。

とはいえ、類まれなる才能を持ちながら、投手として致命的な肩の故障を抱えた現役時代にさまざまな思いがあったことは、「故障さえなければ…」とおっしゃるときの横顔に、にじみ出る。でも、「だからいろんな人間の気持ちがわかる」とご本人もおっしゃる通り、そんな経験がマックさんの「今」を作り上げているのであり、野球教室を通じて社会に還元されているわけだ。子どもたちやご自分のお子さんの事を語るときの優しい表情に、真実のマックさんが見える。

マックさんの本当の優しさを感じるのは、今でも交流があるという、オリックス二軍時代に苦労を共にした後輩たちを語るとき。あるいはチームメイトだった外人選手たちとの腹を割った付き合いを語るとき。実に面倒見がいいのだ。自分を俯瞰で見るクールで合理的な一面と、他人への思いやりのあったかい部分が共存しているところが、マックさんのすごいところ。そりゃ世界中に友達がいるはずである。マックさんは冗談抜きで「世界中どこでも生きていける人」なのだ。

マック鈴木さん、須磨の海の家での素晴らしい時間を、ありがとうございました。


マック鈴木オフィシャルブログ「まっく すてっぷ じゃんぷ」
http://ameblo.jp/macsuzukiofficial/

野球教室については…STAY COOL by JAC
http://staycool-sports.com/baseball-nagata.html




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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」


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