南 郁夫の野球観察日記(87)
快適な甲子園球場で「久しぶりの交流戦」

2021年6月5日 (文/南 郁夫、写真/トモ)


2018年以来の甲子園球場での関西ダービー (今更だがこの名称ダサくない?)。なのに、緊急事態宣言延長中ということで一般チケットの券売はなし。年間シート客のみ入場可能ということで、何事にも根気のない私は「ビジター・ファン行けるわけないやん」とさっさと観戦をあきらめていた。

んが。専属カメラマンがちょいちょいとスマホをひねくりまわすとあ〜ら不思議、なぜかチケットが2試合分取れてしまった。らしい。何をどうしたか値段はどうだったか知りたくもないが、とにかく「オリッにとっていいイメージしかない」甲子園の交流戦に2日間も行けることになったぞ、のレポート。

久しぶりに降りた甲子園駅は…あれ?大きな違和感。らしからぬ清潔な新駅舎に加えて、駅前がなんか「つるん」とどこにでもある郊外ニュータウンみたいになっとる。



グッチャグチャの自転車置き場や異臭を放ってた公衆トイレがあったあたりには「スターバックス」が輝き、怪しげな非公式グッズなどを呼び込みのおばちゃんが売ってたバラックあたりには、おしゃれな公式ショップが上品にちょこんと。

こんなん、甲子園ちゃいますやん!というのは昭和オヤジのたわ言か。

「土地の歴史の残像」であった廃川の護岸跡の古い石垣と松林はきれいに取り去られ、真新しいコンクリートのフェンスとお洒落な植栽で名残を残したつもりであろうか?とにかく、甲子園臭がしない。臭いなんていらんのか。



そうか。無味無臭できれいになったからこそ、駅前広場では学校帰りの女子学生がたむろして「何が何だかわかんない、ていうけどさあ、何が何だかまではわかってるんだよねえ」なんて話し込んでるんだね。哲学かそれ?

話は変わるが「イオン」から変わった甲子園駅前商業施設の「コロワ」って、命名した当時(2017年)にはまさか3年後に「ギリギリセーフ?」と言われるとはよもや思わんかったやろう。三菱地所のプレスリリースによると「ココロ、ワクワク」で「コロワ」だとか。「ココロ、ナゴム」やったらと思うと、危ない危ない。

その場所に昔、甲陽学院高校があったことを知る人も少ない。

とにかく、球場外観に続いて駅前がえらい「つるん」としたってこと。普通に考えれば球場につながる道としては「つるん」がいいに決まってるね。球場に入ってしまえば、そこはオールドスクールな甲子園球場だし。天然芝、屋根なしで言うことなし。初夏の爽やかさを感じれる、最高のナイター環境である。



チケットが取れたのは、年間シート設定もある三塁側「ブリーズシート」。なるほど後ろに年間シートネームが入った席だけに人が座っているというわけで、理想的な人口密度。ネット裏にぎゅうぎゅう詰め込まれるこの球場のファーム試合よりも快適である。

そんな条件なので、もちろん場内は9割以上阪神ファン。なのだが。いつものような大阪ミナミで「間違った通りに入ってしまった」風の雰囲気はどこにもなく、戦闘服の方もおらず(外野は知らんけど、ていうか外野に年間シートなんてものがあるのが、さすが阪神)えらく上品な雰囲気。お酒も禁止だし。なるほど、なるほど。

そんな快適な環境で。ちょうど1戦目と3戦目を観戦した私にとっては、「やっぱり甲子園大好き」な最高の交流戦となったのである。

6月1日 1戦目 オリックス5-2阪神



見るからに責任感が出てきた山岡の粘りのピッチングに加えて、帰ってきた抑えパターン「8回ヒギンスー9回平野」が力強く、ダントツで栄光のセ・リーグを独走する阪神に全く遜色ない戦いぶり。





最近、鳴尾浜にも行けていないせいか、阪神の「つるん」顔の若手選手のほとんどを、私は全く知らない。こちらも駅前同様、知らない間にリニューアルされているのだ。

同点から勝ち越した8回、安達の狙ったとしか思えないポテンタイムリーと紅林の根性タイムリーはいかにも「強いチームの勝ち方」で、軽い驚きすら覚える。2安打4打点の紅林の活躍は目覚ましく、「この子、まだ19歳ですねんわ」と周囲に叫びまわりたい衝動に駆られた。(大声でのビジターチームの応援はおやめください)


6月3日 3戦目 オリックス7-3阪神



同点の8回に飛び出した、またまた紅林のバックスクリーン横に飛び込むライナー勝ち越し2ランが、本当に本当にかっこよかった。「この子、まだ19歳ですねんわ」! それにも増して、最終回に飛び出した吉田正のショート頭上をかすめたまま左中間を割ったダメ押しタイムリーの打球が、かっこよすぎた。



序盤に大山と佐藤輝にホームランが出て、完全に阪神というか甲子園のわっしょいペースだったこの試合をひっくり返せたとは、チーム状態はかなりいい。ひんやり静まり返る甲子園。暴動になる前に(この日のお客さんではならないが)最終回に能見を投入する中嶋監督の采配も、ナイス。



それにしても、紅林である。このチームにとって待望の、本当に長い間待望の、長打力を備えた大型内野手のスター誕生である。しかも右バッターで未成年とくる。うれションしそうである。

スター誕生といえば「佐藤くんのホームランなら見てみたいな」と言ってたら、本当に出てしまった。山崎福の抜いた球を非情に「しばきあげた」佐藤の打球はびっくりするほど高く舞い上がり、そのままバックスクリーンへ。この子もすごい。こぎれいになった阪神スタメンの中でその「ごつさ」が際立っとる。そういえば紅林も「ごつい」。



ちなみに私の家の近所の仁川学院の壁には、佐藤くんの横断幕が誇らしげに飾られている。



いやあ、意外にもオリックス勝ち越しという結果となった、今年の関西ダービー(やっぱりダサいなこの名称)。球団経営的には申し訳ないけど、普通あり得ない風致地区環境での甲子園観戦は居心地よかった。いつもこうなら、タイガースのファンになってもよいくらい(社会的信用ゼロの節操のなさ)。タイガースファンというより、甲子園のファンというべきか。

ただ、阪神攻撃中にファンサービスのつもりか、応援効果音をスタンド後方のスピーカーから流し続けるの、やめてほしい。せっかく今だけの静かな環境を楽しみたい私には邪魔でしかないし、妙に音響が良くてリアルなので気持ち悪い。最初効果音とは気づかず、何度も振り返ってしまった。

もちろん甲子園でも「新しい観戦様式警察」のバイトくんが歩き回っていたが、さほどの「圧」は感じなくてこれはナイス。ただバイトリーダーが「さおだけ〜」みたいな節で「大声での観戦は〜おやめください〜」と拡声器でがなるのは、耳が潰れそうなのでやめてほしい。

私は「極細ポッキーを延々とちょびちょび食べ続ける」という観戦中マスクを付けないでいい技を編み出したが、よき社会人の皆さんは「決して」真似をしてはいけない。

で。場内禁酒法だったはずだが(ビール缶を没収されてる人がいた!)、横でオリックスを応援していたおっさん二人は、最初おとなしく商談口調で仕事の話などしていたのに、試合終盤に連れて声が陽気に大きくなってて、どんどんリラックス。そして勝利の帰路につく二人は同士のこちらに向かって「お疲れ様あ!」と明るく声をかけ、赤ら顔で帰って行った。

あれ?赤ら顔だった?答えは…持ってたマイボトルにあるのかもしれないが、そうでないかもしれない。新しい観戦様式。

帰りの阪神電車に並ばずに乗れたことに驚きつつ、いやあ甲子園よかったよかったと喜んでいたら、専属カメラマンに指摘されて、もっと驚きの事実に気が付いた。

今シーズン、現地観戦5戦全勝である。オリックスは私を常に試合に帯同するべきであろう。

次ページは、専属カメラマンのショットをお楽しみくださいませ。




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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





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