南 郁夫の野球観察日記(81)
球場にファンが戻ってきた!待ちかねた!オリックス有観客試合レポート

2020年7月15日 (文/南 郁夫)



スタジアムに、歓声が戻ってきました。「・・・・」の中で行われてきたプロ野球公式戦も、7月10日からついに人数制限付きながら有観客試合に。プロ野球ファンにとって、徐々に戻りつつある日常の「仕上げ」は球場での野球観戦のはず。ファンのわくわくはいかばかりか? とはいえ「新しい観戦スタイル」ってどんなの?をレポートするべく、解禁2日目の7月11日(土)さっそく京セラドームの日ハム戦に行って参りました。

ちなみに、なぜかこの日は「ほっともっと神戸」で巨人ーヤクルト戦。「せっかくなら神戸でオリックス戦が見たかった」と思いましたが、朝から激しい雨が降ったり止んだり。ほっともっとは大変だったようです。屋根付き空調付きのドームのありがたさに感謝しつつ、許可をいただいて開門前のオリックスの打撃練習から取材できました。

関係者入口付近には、この前の無観客試合のときにはなかった、関係各社からの花輪がずらり。有観客試合にこぎつけた「めでたさ」が、伝わってきます。ちなみに、写真右側は検温チェックの通路。






足早にスタンドへ行くと、気持ちの良いバット音が聞こえてきます(まだグラウンドレベルでの取材は禁止)。やっぱり、試合前の練習風景っていいものですね〜。前日にロドリゲス選手の逆転サヨナラ3ランで勝利するなど、チームが上り調子だからか、オリックス各選手は「いい顔」で打撃練習を行っていましたよ。そのロドリゲス選手が、昨日のことなどなかったように「真摯な顔」で調整していたのが印象的でした。ハングリーさを感じます。





3開門時間が来たところで、いったん外に出て観客として再入場。
<新しい観戦スタイル・その1> まず検温所で体温を測り(通過時に自動測定するタイプ)、測定済みの「赤紙」をもらいます。それをゲートで渡しての入場許可となります。いきなりゲートに行っても入場できませんので、ご注意を(やっちゃいました)。もちろん、マスクはお忘れなく。

<新しい観戦スタイル・その2> 売り子のお姉さんはスタンドを歩きまわりません。売店エリアで立って販売していてなんだか新鮮です。ビール党は好みの銘柄(お姉さん?)を見つけやすいかもしれませんね。アルコール類の販売には一部制限があるようですが、各売店は(衛生管理に留意して)ちゃんと営業していますよ。

<新しい観戦スタイル・その3> スタンドはすべて指定席で、基本的に前後一列、隣席とはシート2席空いている状態。うーん、ナイス・ディスタンス。視界良好で快適です。試合前のセレモニーはなく、ブル・ベルちゃんもグラウンドのファールライン内から手を振るだけで、ファンとの接触はなし。離れているので同行者とのおしゃべりもあまりできないためか、試合前のドームは有観客なのに「・・・・・」てかんじです。遠くでむずかる赤ちゃんの泣き声が聞こえます。



<新しい観戦スタイル・その4> 応援歌を歌ったり指笛を鳴らすのは禁止です(ゆ、指笛?鳴らせる人そんないる?)。試合前や試合中のちょっとした「間」って、応援団がなんとかしてたところがありますが、外野席からはなんの音もしません。個人的には、静かなときは静かなのもいいものでした。一瞬、自分がどこにいるのか忘れますが。

それでも試合開始時刻が近づくと、なんとなく場内がざわつきます。みんなの期待の波動が伝わってくるかんじです。そんな中、守備につくオリックスの選手名が紹介されていよいよ試合開始の、そのときです。

「レフト、T-岡田!」と選手のコールごとにまさに自然発生で沸き起こった、それまでの静寂を打ち破る力強い「拍手」。その温かい心のこもった響きが、私の心をいたく打ちました。突然、静かだった球場に一体感が生まれました。大声を出せない中、ファンは自分の「両の掌」で気持ちを表現するしかなく、そのフィジカルな表現の力を試合中もつくづく実感することとなります。強制されない拍手は嘘をつきません。応援の原点ですね。

<新しい観戦スタイル・その5> 大きな声を出しての応援、タオルを振り回しての応援はご遠慮ください。オリックスが勝ち越した8回のチャンスで、前席の少年がタオルを振り回そうとしてお母さんに止められてたのが可哀想でしたが、そこでロドリゲス選手が試合を決定づけるタイムリーを放ったときは、正直に白状します。 私は、私は「大きな声をあげてしまいました」…て、誰に謝ったらいいのでしょうか。

この日は、連日のそのロドリゲス選手の活躍もあり、オリックスが有観客試合になってから地元で連勝という、ナイスゲームとなりました。(次の日も山本投手の快投で勝ったので少なくとも3連勝)



先発の田嶋投手は再三のピンチを粘り強くしのいで(そのたびに温かい拍手が!)今年は真価を発揮していますし、米マイナーリーグでロドリゲスとともに苦労したというヒギンス投手に来日初勝ち星がつくなど、今後の希望に満ちた展開を目撃できました。出場すれば必ず「なんとかしてくれる」と私が信頼している、山足選手の打撃・走塁での目覚ましい活躍も嬉しかったですね。



新しい観戦スタイル? ぜんぜん大丈夫でした。
自然にあげた声も、マスクしてるしそもそもそんな大声出せないしで「むごごご」でしたし。私が見ている限り、ファンの皆さんはきっちりと自席から離れずディスタンス取っていたし、無用な野次を飛ばす人もいないし、規制退場ちゃんと守っていたしで、「観戦民度、高いぜ」と思いました。間違っても事態が逆戻りせぬよう、いまこそルールを守った応援を心がけたいところです。選手はちゃんとプレイで応えてくれますからね。

とはいえ、やはり規則的に観客がまばらに配置されているという「意図的ディスタンス」にはやはり妙な統制感を感じてしまうし、そりゃ満員で「どんがらガッシャーン」なスタジアムの雰囲気も恋しいよな〜、とは思いました。でも、我慢、我慢ですね。スタジアムが満員になる日は、必ずきますから。

さて、前回のレポートでもお伝えしましたが、今年から刷新されたスコアボードの演出はやはり素晴らしいです。特に、選手情報や現在状況が常に確認できるのは本当に便利。出版社には申し訳ないですが「野球名鑑いらず」です。そして、打席ごとに表示される選手の「プチ情報」が楽しいんです。



例えば、若月選手は、まとめるとこんな人です。 好きな食べ物:「しゃぶしゃぶ(ポンズ)」 俺の癒し:「好きな時に好きな物を食べる」 俺のここを見てくれ:「渋いところ」 …てことは、若月選手は好きな時にしゃぶしゃぶ(ポンズ)を食べる人なんですね。マジ渋いっす。

吉田正尚選手はダンス系のマッチョテーマソングが流れる中、 お気に入りの音楽:「クラシック」 で「家電オタク」と表示されました。意外な一面が知れて、面白いです。自宅のこだわりオーディオシステムでベートーベンの交響曲を聴きながら、黄色ダンベルで筋トレをする吉田正尚選手を想像してしまいました。

アダム・ジョーンズ選手は、 俺のここを見てくれ:「性格」 そういえば、バリバリのメジャーリーガーでDHなのに、守備イニング前の外野キャッチボールの人数合わせに、笑顔で参加しています。最後はボールの回収までやります。これ、普通は若手の役目ですよね? チームに溶け込む意欲が伝わってきて「いい性格」だなあと思わせてくれました。

チャンスで売り出し中の若手・廣澤くん 「俺のここを見てくれ:守備」 「あらら〜」と思いましたが… これもご愛嬌(笑)。守備も打撃も上を目指してがんばってください。

オリックス勝利ということもあり、帰路につくファンたちの顔は笑顔、笑顔でした。「開幕記念Tシャツ」ももらったし! 私も、とうとうここまでこぎつけたな、と感慨を深くしました。シーズン中止か? とまで報じられていた春先のことを思えば、嬉しい限りです。序盤つまづいたチームも徐々に反抗に転じており、希望が持てますし。ことさら長く感じる梅雨が明け、諸事情も改善されて「野球の夏!」がやってくるのが本当に楽しみになってきましたね。







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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」




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