南 郁夫の野球観察日記(46)
オリックス 背番号の変遷「10」〜「19」

2018年2月7日(文/南 郁夫)


唐突に始まった、オリックス背番号の変遷シリーズっ。懐かしい名前に、みなさんの野球記憶の扉が開いているであろうか? 華々しくあるべき前回の「一桁台」で、「んー、こんなものか」と思われた方がいるかもしれないが、歴史は変えられない。そんなものである。

オフはネタがないせいか、けっこう他メディアでも背番号ものの企画ってやっているようだ。が、「オリッだけ」ちうのはここだけの企画ですんでっ。すこんとこ、よろしく。さて。今回は「おそらく」名投手が続々出てくる(?)10番台である。さっそく、いってみまそ。


「10」
藤井康雄[外](89〜92)、岡田彰布[内](94〜95)、白井一幸[内](96)、谷佳知[外](97〜06)、大引啓次[内](07〜13途中)、李大浩(13)、谷佳知[外](14〜15)、大城滉二[内](16〜)


「10」は野手番号である。オリッでもそれなりの野手ラインアップになってはいるが、やはり大引と谷の印象が強い。主将まで務めた大引も功労者として捨て難いが、やはり私の10番は「出戻っても10」の谷である。暗黒時代を攻守で支え続け、右足を後ろに下げた独特の構えから、びっくりするほど右中間にたくさん二塁打を打つ特殊技能で我々を楽しませてくれた、谷。しかし貢献の割にファンが少ないように感じるのはなぜ? 性格?(顔?)全盛期のチームに入団しながら、彼が入った途端に優勝から遠ざかってしまったのもまた、事実なのである。


「11」
佐藤義則[投](77〜98)、木田優夫[投](00〜01)、金田政彦[投](02〜04)、川越英隆[投](05〜09)、大久保勝信[投](10)、近藤一樹[投](11〜12)、松葉貴[投](13〜)



これはもう、どう考えたって、阪急〜オリックスで21年間「11」を背負い続けた大投手「ヨシさん」しかいない。その全盛期は阪急ブレーブス時代ではあるが、95年「がんばろう神戸」イヤーの、史上最年長ノーヒッターの瞬間に両手を前に突き出した姿が… 忘れがたい名シーン。退団後も指導者としてダルや田中マー君を育てて「優勝請負人」の名をほしいままにしている、ヨシさん。またオリッに戻っていただいて、誰かに「ヨシボール」教えてほしい。





「12」
山沖之彦[投](82〜94)、水尾嘉孝[投](95〜00)、シェルドン[内](02〜03)、歌藤達夫[投](04〜07途中)、木元邦之[内](07)、コロンカ[投](08)、ボーグルソン[投](09)、木佐貫洋[投](10〜13)、ランズラー[投](14)、佐野皓大[投](15〜16)、マレーロ[外](17〜)



投手の番号とも言い切れない「12」。オリッでもバラエティ豊かな選手が継承し、今では完全に外野手であるマレーロの印象。1年だけなのに「ホーム踏み忘れ」エピソードはそれだけ強力なのである。とはいえ、チーム創設時の2年間を2桁勝利で支えた山沖が、代表選手であろう。阪急から12年間あの大きな背中に12を背負った功績は大きい。「一言も聞き取れない解説」だけの人ではない、のである。ちなみに山沖はFA移籍して一軍出場のないまま退団した、プロ野球史上唯一の選手。ちなみに阪神が用意した背番号は「43」と、まるで期待が感じられなかった。


「13」
吉田直喜[投](90〜96)、牧野塁[投](97〜03)、柴田誠也[投](04〜06)、吉田修司[投](07)、清水章夫[投](08〜10)、桑原謙太朗[投](12〜14)、佐藤峻一[投](16)、山岡泰輔[投](17〜)



「13」、マジ厳しい。もちろん全員が投手ではあるが、これといった選手が見当たらないのだ。10年間在籍した牧野塁(最初の3年間は「61」)の印象がないとは言えないが、特筆するようなシーンがないし、最後の思い出は「葛城と一緒に阪神にいった」だし…。そういう意味でまっさらな「13」の歴史を、これから山岡くんが作ってくれるということを期待して、たった1年の実績ながら彼を13の代表選手としたい。彼もインタビューで「背番号13を着ているファンを増やしたい」と言っていたし。


「14」
山内嘉弘[投](88〜94)、丸尾英司[投](95〜99)、山口和男[投](00〜02)、加藤大輔[投](03〜04)、スチュワート[投](05)、岸田護[投](06〜09)、古川秀一[投](10〜13)、吉田一将[投](14〜)



山口高志のイメージしかない「14」。オリックスの背番号を辿ればたどるほど、阪急ブレーブスの歴史の重さが身にしみるという、この現実。どうしても「剛腕投手」を期待してしまうこの番号ゆえ「山口2世」として期待され、当時日本人最速の158キロを目撃した山口和男を推すしかない。短い間ではあったが、我々は夢を見た。しかしその後なぜか彼は背番号を「18」に変更してしまい、異常なほどの制球難で危険球キングとして名を馳せただけで大成せず。私は神戸のブルペンで暴投した彼のボールがスタンドに「ガツーン」と飛び込んだ光景を忘れない。ブルペンで暴投するか? 普通。危ないわー。


「15」
関口朋幸[投](79〜90)、野村貴仁[投](91〜97)、ウィン[投](98)、金田政彦[投](99〜01)、具臺晟[投](02〜04)、加藤大輔[投](05〜11)、佐藤達也[投](12〜)



「それなりの」好投手がつける印象の「15」。オリックスにおいても、まあ… そんなかんじである。今や他の理由で有名になった野村であるが、オリックス時代はセットアッパーとして貴重な存在。特に96年の日本シリーズでゴジラ松井を完全に封じ込めてチームを日本一に押し上げた功績は大である。あと、具臺晟が見せてくれた超ロングキャッチボール(返球は2人経由!)も捨て難いが、ナックルカーブを駆使してセーブ王(08年)に輝くなど、全力投球でチームへの貢献が大きかった加藤(14から変更)を代表選手としたい。大ちゃん!


「16」
伊藤敦規[投](88〜94)、ニール[内](95〜97)、川口和哉[投](98〜03)、谷中真二[投](04)、ブライアント[コーチ](05)、平野佳寿[投](06〜17)



平野には本当に「ありがとう」と言いたい。どんなときでもエクスキューズなく繰り返された、彼のプロフェッショナルな炎の投球。昨春のWBCに選ばれてしまったことがきっかけで、まさかメジャー移籍とは! だから私はWBCなんぞに(以下自粛)。でもありがとう、グッドラック!で、この話の流れでオリッの「16」は永遠に平野、と言いたいところだが。素晴らしい思い出が刻まれた背番号16は、どうしたって、ニールということになってしまうのだ。あぁ、ニール。チーム最良の時期に在籍したことが大きいのだろうが、あれだけファンに愛された外国人選手はいまい。結婚式はグリーンスタジアム神戸。ライトスタンドで見上げた、ニールの場外ホームランは一生忘れない。


「17」
長谷川滋利[投](91〜96)、カズ(前田和之)[投](98〜00)、戸叶尚[投](01〜04)、香月良太[投](05〜12)、東野峻[投](13〜14)、山崎福也[投](15〜17)、増井浩俊[投](18〜)



どうしたって山田久志の番号である「17」。であるが、それはもちろん阪急ブレーブスの話。オリックスになってその栄光の番号を引き継いだ長谷川はしかし、十分に期待に応えて90年代を支えてくれたのである。それ以降の投手が「うーん…」だったこともあり(戸叶はサイドスローだったこともあり、なんとなくイメージに合ってはいたが)、やはりオリックスの17は長谷川しかいないであろう。ちなみにマリナーズでも「17」を付けており、自身もこの番号に愛着があると思われる。現在球団シニアアドバイザーらしいが何やってんの? ゴルフ?


「18」
酒井勉[投](89〜96)、杉本友[投](97〜00)、具臺晟[投](01)、山口和男[投](03〜09)、岸田護[投](10〜)



「18」といえばあーた、プロ野球的には絶対的なエース番号である。しかも右の。そう! ガスタンクの米田哲也! とまたぞろ阪急ブレーブスの思い出に浸ることになる。それにしても… オリックスになってからの背番号18には、残念ながらその番号のイメージに見合う選手がいない。あえていえば、エースだったことはないが、09年には10勝を挙げるなど、ある程度の実績を上げてこのチームで12年間投げ続けている岸田が、代表選手なのかな。もう一度、勝利投手になってほしいものである。


「19」
高木晃次[投](87〜93)、高嶋徹[捕](95)、フレーザー[投](96〜98)、木村昌広[投](99〜01)、小川裕之[投](02〜04)、金子千尋[投](05〜)



「19」はもう、オリッでは「金子の番号」としか言いようがない。フレーザーのヒゲの印象が3%くらいは頭に残っているが、現実的に19といえば、100%:金子である。そのスポーツ選手らしからぬ、唯一無二のキャラクター。見応えたっぷりの変幻自在のピッチングスタイル。ゾーンに入ったときの、無敵の投球。マウンドで背を向けて耳の横に両手を添える独特のピッチング前ポーズと、そのとき背中で光る「19」。オリックスの19は、金子以外に考えられない。


というわけで。オリックスの10〜19、いかがであったろうか。(10以外は)主力投手に与えられる番号であるべきラインアップだが、わりと微妙な番号もあるにはあった、というか、あった。少し気になったのは、10番台の番号間での背番号変更が多いこと。加藤は14から15に変えているし、山口は14から18、具臺晟は18から15といった具合。なぜこんなことが起こるのかよくわからないが、こういうことは強いチームでは起こらないと思う。

次回は20番台。お楽しみに。
えっと… ついてきてますよね?








<過去コラム一挙掲載!>

オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。





南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





Copylight(C)K!SPO All Rights Reserved.