南 郁夫の野球観察日記(36)
注目のルーキー、山岡投手にインタビュー!

2017年9月10日(文/南 郁夫、写真/トモ)


8月終盤くらいから、なんとなく新しい息吹が感じられてきた今年のオリックス。打者のアメージング!が吉田正尚選手なら、投手のアメージング!は文句なしにルーキーの山岡泰輔選手であろう。彼の今季両リーグ新人投手初の完封劇(8月26日西武戦)は痛烈なカンフル剤となり、それ以降チーム状態がぐっと上向いたのである。

開幕以来、ローテーションをひょうひょうと守り続ける山岡選手。そのマウンドさばきを見ていると、彼がルーキーだということを完全に忘れてしまう。落差のあるエグいスライダーを見ていると、彼がまだ21歳ということを忘れてしまう。安定度抜群。少々打たれようが大崩れしない彼のメンタルは、すでに大投手の風格。なのに、ルックスは野球少年!

今回は、そんな興味津々の山岡選手のインタビューが実現! 他のどこにもない、彼の実像に迫ってみたいと思う。
9月4日、試合前の京セラドーム・インタビュールームにて。



■山岡 泰輔(やまおか たいすけ)#13
1995生 広島県出身 右投・左打
瀬戸内高校〜東京ガス〜オリックス 2016年ドラ1

ーールーキーながら、大活躍です。現在の成績(9月4日時点で、7勝8敗 防御率3.13)についてはどう感じておられますか?

「まだ、借金ですから」

※この後、9月9日の楽天戦で勝利投手となり、8勝8敗とした。 


ーーメンタルがとても強い印象を受けますが…

「勝つために一生懸命、黙々と投げている、て感じなんですけどね」


ーープロの世界は想像と比べて、どうでしたか?

「想像以上に疲れてはいますが、その他の面では、想像通り…ですかね。特に驚くこともなかったし、想像以上のことはなかったです。社会人のときは連投、連投だったんですが、プロでは1週間に1回投げられる準備をすればいいですし。気持ちの面では、社会人の方が大変でした」


ーー気持ちの切り替えがとても早いな、と感じています。

「負けるときもあるし勝つ時もありますからね(笑) もちろん勝とうと思う気持ちはあるんですけど、全部勝てるわけではないですし。負けても1週間後には違う試合があるんで、深く考えないです」


ーー西武戦(8月26日)の完封はお見事でした。最後の140球目(サインに)首振ってましたが…

「全部の球、投げたいボールを決めて投げているので。あの時は、最後は絶対チェンジアップと決めていました。(三振を)狙って、決まって「よし!」という気持ちになりましたね」


ーー新人王も見えてきましたが、意識しますか?

「そういうの興味ないです(笑) 人が決めることだし。取れればラッキーて感じですかね」


ーーそ、そうなんですね。マスコミ報道とかあまり気にしないんですか?

「スポーツ新聞もあったら見る程度で。野球中継を含めてテレビもあまり見ないですし(笑) 野球してるとき以外に野球のことを考えたことないです。「常に野球」って感じが自分にはないんですかね。もちろん、日常生活で手を怪我するようなことはやらない、というような意識はしていますけど」





ーー休みの日とか、寮の部屋で何してるんですか?

「ストレスを溜めないように、リラックスですかね。音楽聞いたり雑誌見たり、服が好きなんでネットショッピングしたり。大城さんや(同い年の)若月とご飯に行ったり…」


ーー小さい頃からの憧れの選手とか、いますか?

「いないんですよ〜それが(笑)。野球見ないんで(笑)。カープファンでもなかったですね」


ーー小学生のとき、ソフトボールから始められたんですね。

「サッカーなどもやりましたけど、面白くなくてすぐやめて。友達3人でソフトボールに入って(笑) それから野球に変わって、それが得意だったのでずっと続けているという…」


ーープロ志向はありましたか?

「野球をしてる以上プロが夢、というのはありましたけど、なれるとは思ってなかったです。社会人のときに、やっと意識したかな?」


ーー高校から社会人に進まれたのには理由があるんですか?

「レベルアップですね。まっすぐのスピードとキレをもっと磨こうと思って。社会人野球には社員との一体感など、どの野球にもないものがありました。とても成長させてもらいました」


ーーキレといえば、スライダーでバットをへし折ることがすごく多いです。投手としてそこは快感ですか?

「やっぱり、うれしいですけど(笑) そこにポイントがあるわけではないですよ。とにかく勝てるピッチャーになりたいです。なぜ打てないのかな?と思われるまま、淡々と勝ち数が増えていくという感じのピッチャーがいいですね」


ーーデビューから数試合、勝てなかったときは苦しかったですか?

「いえ。簡単に勝てるとは思ってなかったですし、まだ今年の目標が何勝!とかの選手ではないですから。怪我せずローテーションを守るという目標だけでやっています。1年目だから、それ以外の余計なことは考えないでおこうと」


ーーローテーションを守るのは身体の方も大変だと思いますが、ケアには気を使っておられますか?

「抜き方と締め方、きちんと考えてやっています。今まで、大きな怪我はしたことがないんで」



ーー将来のエースとして、自覚はありますか?

「いやーまだまだ。でも、チームの軸にはなりたいです。こいつが投げると勝てるというところを見せて、僕の背番号13番を着ているファンを増やしたいですね」


ーープロ野球選手として、ファンにどんなアピールをしていきたいですか?

「僕みたいになりたい、という子どもが増えれば一番嬉しいですね。野球を知らない子でも僕が投げてるのを見て「楽しい」とか「鳥肌が立つ」とか、そういうのを感じてほしいです。それをきっかけに野球を始めてくれたら、最高ですね」


ーー最後に。野球をやってて、どのようなシーンが一番好きですか?

「アウェーでピンチで相手チームやファンがわーっと盛り上がっているときに、自分の一球で静まり返らせてため息に変えさせる、みたいな瞬間ですね(笑)」


ーーありがとうございます。それでもやっぱり新人王、期待してます。残りのシーズン、がんばってください。

「がんばります!」



「ひょっこり」という感じで現れた山岡選手はいたって自然体。目がいたずらっぽく光る、実に魅力的な21歳の若者であった。何事にも明確に自分の感覚というものを持っていて、その言葉はうわずることなく借り物でない。ときどき「くっ」と笑う顔がかわいい。「緩急つけた」受け答えは心地よいテンポで、的確でフレッシュである。ピッチングと同じだな、と感じた。

山岡選手は、マウンドを降りれば、まったく野球のことは考えないのだ。「考えないようにしている」のではなく「考えませんね」と断言する。休みの日は大好きなファッションのことを考えている、という彼の夢は自分のブランドを立ち上げることで、その話をしてくれたときは目がキラキラ輝いていて、微笑ましくなってしまった。彼ならなんでもできそうだ。

少年時代から野球中継を見ることもないので憧れの存在もいない、という発言はオールドファンには衝撃だが、なんだか痛快でもある。しっかりと自分というものを持っている。まさにニュー・ジェネレーション。新世代のエースとして背番号13がオリックスを背負う日は、そう遠くないどころか、すでに来ているじゃないか!と私は思う。

山岡選手は、本当に「胸がすっとする」若者であった。こんな逸材がオリックスにいることが幸福である。今後も「クール」な彼の投球に期待したい。彼には、なんだかすごいことをやらかしてくれる「予感」が漂っているのである。








<過去コラム一挙掲載!>

オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。





南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





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