南 郁夫の野球観察日記(40)
すごいぞ、女子野球!
「女子野球ジャパンカップ」に行ってきた

2017年11月7日(文・写真/南 郁夫)


先日インタビューした、兵庫ディオーネみなみ選手の活躍などで、注目度が高まる女子野球。その、みなみ選手の応援も兼ねて、シーズン締めくくりとも言える「女子野球ジャパンカップ」に行ってきた。昨年に続いて、2年連続での観戦である。
おさらいしておくと、女子野球ジャパンカップとは「高校、大学、クラブチームとプロ野球チームのそれぞれ最強チームがトーナメント戦を争い、その年の女子野球日本一を決定する大会」。男子もこれをやれば面白いのに!と思うが、トーナメントゆえ「万が一、ソフトバンクが花咲徳栄に負けたら…」というヒエラルキー崩壊への恐怖により、プロ野球機構が開催に消極的なのであろう(想像)


「女子野球ジャパンカップ」は、今年で7回目とすっかり定着。昨年の開催地は「ほっともっとフィールド神戸」であったが、今年のメイン球場はいまや女子プロ野球の聖地である「わかさスタジアム京都」。昭和世代には、阪急ブレーブス準本拠地であった「西京極球場」のことね、と言えば「知っとる知っとる」であろう。レフト後方にマルーン色の阪急電車が走る、なんとも風情のある球場である。
足を運んだ11月4日は3日間開催のちょうど中日で、冷たい木枯らし吹きすさぶ天候であったが、ファンや関係者などで現地は盛り上がっていた。お断りしておくが、この日専属カメラマンは高知のオリックス秋季キャンプ取材に行ってしまったため、不在。女子選手たちのアップ写真は、ないっ(残念)



お。球場の外には豊富なアイテムを揃えたグッズ売り場があり、ファンが熱〜い視線を送っている。後で知ったのだが、アマ時代の写真と現在の写真を組み合わせたカード付きのJWBL(女子プロ野球)チップスというものが売られており、これは記念に買っとけばよかったと後悔。

さて、私のお目当ては準々決勝の「兵庫ディオーネvs福知山成美高校」である。福知山成美といえば、春に取材したディオーネの長身右腕・古谷恵菜選手(シーズン途中に京都フローラに移籍:今季4勝)も輩出している強豪校で、今年の全国高等学校女子硬式野球選手大会では3位となっている。とはいえ、今季のシーズン優勝を飾っているプロチームと高校生の対戦。試合前の練習を見ても体格の違いが顕著で、互角に戦うのは厳しいかな? と思っていたが…





フタを開けてみると、終始主導権を握ったのは、高校生。9月に香港で行われた女子野球アジアカップ(日本が全勝優勝)の侍ジャパン女子代表に選ばれたという、大野七海投手が懸命な投球を見せ、打線も活発につながって、序盤を3−4と互角の展開に持ち込んだ成美高校。4回裏にはこれまた侍ジャパン女子代表の阿部希選手がなんとなんと、ガッツーんと逆転3ラン!そのまま終盤まで6−4と高校生がリード!という劇的な展開に球場は「騒然」。最終回にディオーネが意地を見せて、成美が惜しくも逆転負けという、スリリングな試合となったのである。

6−7の僅差で負けはしたが、最後にディオーネのエース、里綾美投手まで引きずり出した高校生たちの健闘は、特筆すべきであろう。翌日の準決勝ではそのディオーネが大学2位の尚美学園大学(高校1位の埼玉栄高校に準々決勝で完勝)を7−0で圧倒したことを思えば、なおのことである。女子高校生たちの思い切りのいいプレイと爆発力を見ていると、女子野球の未来は明るいと思わざるをえない。女子高校野球大会・準優勝の履正社高校も、1回戦でプロの京都フローラを破り、高校生の台頭が顕著となった今大会だったのである。



現地で見ることはできなかったが、翌日の決勝は「兵庫ディオーネvs埼玉アストライア」のプロ対決となり、埼玉が優勝。結果的に、プロの面目は保たれた。そういう意味でこのジャパンカップはプロ選手にとっても、アマとの差を見せなければならない使命を帯びた舞台であり、大変に意義深い大会と言える。アマ選手がプロから受ける刺激の効果も計り知れないであろう。このあたりが、女子野球のプロ・アマの垣根の全くない美点だと思う。



さて。女子野球の新世代スターといえば兵庫ディオーネのみなみ選手でしたよね? 成美高校戦の4回表。彼女の応援がメイン目的であった私の前で、見事に逆転2ラン!を打ってくれたのである。すくっと構えた凛々しい立ち姿からの、力感溢れるスイングで放たれた彼女の打球は、いわゆるムーンショット。高々と美しい弾道を描く打球はプロの風格漂う、見応え十分のホームランであった。いいものを見せてもらった。彼女のムーンショットに憧れてプロの世界に進む女子選手が増えれば、みなみ選手も嬉しいことであろう。

というわけで、兵庫ディオーネはシーズン優勝こそ果たしたが、女王決定戦とジャパンカップで立て続けに埼玉アストライアに敗れるという、悔しい今シーズンのエンディングとなってしまった。選手たちは悔しさを胸に、昨年の完全優勝を再現すべく、来年に向けてすでに準備に入っていることであろう。さらなる飛躍に、期待したいところである。もちろん、みなみ選手のホームラン王奪取も含めて。
そろそろ紅葉が舞い散り始めた、晩秋の予感が漂う京都から。女子野球ジャパンカップ・レポート。野球観察者がお送りしました。どすえー。







<過去コラム一挙掲載!>

オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。





南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





Copylight(C)K!SPO All Rights Reserved.