南 郁夫の野球観察日記(33)
お魚の恋人 ロッテ戦で花火見物

2017年7月2日(文/南 郁夫、写真/トモ)

1カ月ぶりの神戸開催となった、6月23、24日のオリックス対ロッテ戦に行ってきた。神戸でのロッテ戦といえば、古い話で恐縮だが98年「ジョニー黒木・七夕の悲劇」があまりにも有名なように(9回裏に同点弾を打ったオリッ選手は誰でしょう?)、失礼ながらオリッファンとしては基本「いい」イメージがあるし、今年のロッテはちょっとチーム成績も「あれ」だしということで。期待満々ってやつで。



で。ロッテといえばレフトスタンドで「鉄板上のそば飯」のようにハジける、黒くて忠実な大応援団である。雨の日も風の日も、試合の趨勢にまったく関係なく休まず応援行動を取り続ける彼らの「仕事ぶり」には、いつも心を打たれている。相手チームの応援とはいえ、神戸ならその声も空に吸い込まれて、うるさくはないし。

千葉から「軽自動車に男5人で」乗り込んでくる強者もいると言われる彼らの大部分を占める、20代〜30代の独身男性たち(個人の感想です)。彼らの独特の声(オーオー)で叫ばれる「霊歌」にも聞こえる、応援歌。それは他チームの応援歌には決してない質感であり、その特異なメロディが太鼓の音圧とともに、耳にこびりついてしまう。



耳に残ったそれは、翌日の仕事中など通常の生活場面で何の脈絡もなく無意識にリズミカルに口をついてしまい(燃え上がれ♪燃え上がれ♪勝利をつかみ取れ〜♪)、周囲に「え?」と驚かれて多いに困ることになる。仕事に燃えてないのに。ロッテファンでもないのに。オリッの応援歌はあれだけ聞いても「一切」覚えられないのに(そもそも応援団へのシンパシーが希薄)。

さて。試合の結果はといえば、神戸で1勝1敗。互角やん。ロッテにペーニャがいるのには驚いたが、その「通天閣打法応用編」(叩きつけた打球が内野手の頭を超える)にもっと驚いたり、初めて見るサントスがメジャーのトップバッターぽくてカッコよかったり、パラデスがあまりにも陽気で笑えたり。久しぶりに生で見るロッテはけっこう様変わりしてて、楽しかった。

特に目立ったのは、4年目の三木か。23日の試合ではなんと4安打とニューヒーローの誕生である。私の選手名鑑によると「打撃が課題なのは明白」だったそうだから、これがブレイクであることは「明白」。どんなチームにも明るい光明はある。それが野球。でもロッテで本当に見たかったのは、私の心を(魚なのに)鷲掴みにして離さない「魚」だ。今やチームよりはるかに有名な「魚」を是非、遠征に連れてきてくれ。ください。





一方で、消えゆく光。引退発表をした井口が代打で登場したときは大声援。「絶対スペイン語がネイティブやろ」と思わせるあの顔が今季限りとは、寂しい限り。球歴、すごいし。で。同年代でプロ球歴は井口より長い福浦もこのチームにはいるのだが、もう試合には出ないの? スタンドには福浦ユニが多数見られて、人気の健在ぶりを示してはいた。毛髪存在時はジョニーとともに「ロッテリアの看板」になるほどアイドル人気だった彼の今後も、気になるところ。

オリッはといえば。23日はルーキー・山岡がまた「援護なしの不憫パフォーマンス」を発揮して力尽きたものの、24日は松葉が復調を示す好投を見せる。その試合で目の覚めるような決勝ホームランを打ってヒーローになったのは、舞洲サブ(まいすじゃないよまいしまだよ)でついこの間見た、小島。直前まで二軍にいた選手が一軍に上がってお立ち台に登るのは、いつ見ても劇的であることよ。



奇しくも24日は神戸恒例・年に一度の「大花火大会」だったのだが、小島は確か昨年の大花火大会の日にもヒーローになっている。すごいなそれ。しかも今年は花火を一発、自分でもライトスタンドに打ち込んで! 昨年は後半ぱったり出なくなった小島だが、すでに30歳。なんとか一軍にしがみついてほしいところ(守備位置が悩ましいが)。ちなみに私は昨年、三田のアウトレットで買い物をする小島ファミリーを目撃しました…。がんばれ。



その、大花火大会。試合後に「普段の10倍」花火が打ち上がるとあって、スタンドは家族連れなどでにぎやかにぎやか。売店は冷え切った焼きそばが売れに売れて、うれしい悲鳴。私も一番見やすいと言われる一塁側二階席で見物させてもらったが、さすがに大迫力で壮観であった。どこよりも早く観れる花火大会として、これを見逃す手はないと思う。フィールド上で見るのでなければ、基本、無料だし。

しかし私は、あえて言う。この花火は球場内ではなくて総合運動公園の駅前から見るのが一番すごい、と。恐ろしいほどの至近距離で炸裂する火の玉は、花火というより「爆撃」で、「うわー」と大いにトリップできるのだ。その代わり、無慈悲にばらばら・ちりちりとホットな花火の残骸が降ってくるので、子どもにはオススメできない。ついでに言えば「先の大戦」の空襲経験者の老人にもオススメしない。



花火の爆音を背に。混乱を避けようと花火大会終了前に駐車場に向かいながら、「そういえば、負けたときのロッテ応援団の撤収って、異様に早いよな」と思い出して笑う。オリッ選手の勝利のハイタッチを見ながら、ふとレフトスタンドに目をやると、あれだけ整然と応援していたあの軍団が、幻のように「ふっ」と消えているのだ。

花火くらい、見たらいいのにね。


追伸:「今年の夏の陣のユニはマシだ」と巷で評判だが、じゃあ今までのはみんな内心どう思っていたのか!?









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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





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