南 郁夫の野球観察日記(9)
光の射す方へ。オリッ後半戦展望。

2016年7月17日(取材・文/南 郁夫)



オールスターまでの成績が「衝撃」の30勝50敗。12球団唯一の勝率3割台で、首位ソフトバンクとの差は足し算も面倒な、26ゲーム!という今年のオリックス(以下オリッ)
さすがに20年も優勝から遠ざかると、ファン心理としては「打たれ強い」を通り越して「苦行」??
いえいえ私は「野球観察者」(きっぱり)
計算上3回に1回勝つなら悪くもないやんと思えるし(関根潤三「一勝二敗の勝者論」の影響)、相手チームのセンター・陽岱鋼に手を振ってもらって喜んだり(その日2本もホームラン打たれとるのに)、安達と駿太の守備「だけ」見て盛り上がったり、負け試合でも野球観戦にはいくらでも楽しい要素があるんだい(半笑)。
それに、考えようによっちゃ、ソフトバンクが30連敗してオリッが30連勝する「だけ」で状況はひっくり返るんだしなっ(大丈夫か?この人…)

弱いチームを応援するのは「病気のペットを飼っているようなものだ」と、アメリカの名野球コラムニスト、ロジャー・エンジェルの本のどこかにあった。そこまで深刻になることもないとは思うが(いっつオンリー野球)、いくら弱くても、永年応援しているチームを見捨てるわけにはいかない。
いま最も気になる「神事としてのカープの試合」をテレビ観戦して現実逃避しても、やはりスマホでオリッの試合速報はチェックしてしまう(で、しっかり負けてる)、私だ。
スポーツ記事でボロカス言われてようが、そんなオリッの試合を生で見たいと思う。チーム成績が悪いのは、単に結果が出ないからだけであって、誰かのせいにしてもしょうがない。野球なんだから。
とはいえ今年花開いたカープのチーム作りじゃないけれども、同じ負けでもチームの将来に明るい展望が見える負けならいいなあ、とは思う。

で。私は誤解していたのだが。報道によりますと〜、監督も参加した6月下旬に開かれたオ編成会議において決定したのは、
「現有戦力で戦う」
「来季も福良監督」
「若手の起用は評価する」
「でも高額払ったんだから外国人は使ってみてね」
だった、らしい(あくまで推測記事)。
さすがに来季構想が、チームに縁もゆかりもない有名人監督や故障抱えたFA選手、他チーム解雇された外国人選手の獲得なら気分も萎えるが、フロントもついに現実的判断を下した模様である。
これを受けて、すでに若手起用を進めていた福良監督はさらにそれを加速。7月に入って、育成→支配下登録→即一軍昇格スタメン→お立ち台→二軍降格の「短編映画・園部の栄光」の例を出すまでもなく、連日スタメンには「私は誰でしょう?」選手が登場。「だ、誰えっ?」と相手チームもファンも選手名鑑が手放せない。




一・二軍のシームレス化が極端に進み、オリッの全野手のうち一軍登録されたことがないのは、オールスター時点で2人だけ(宗、吉田雄)。先を見据えた福良監督は、チーム全体を把握したいのである。二軍選手にとっても、これ以上のチャンスはない昨今。田口二軍監督の携帯電話は鳴りまくってると思う。

さて。オールスター直前の試合のスタメンに名を連ねたのは、
(1)西野(2)安達(3)糸井(4)T-岡田(5)ボグセビック(6)奥浪(7)大城(8)駿太(9)若月。
オリッの事情に明るくない一般の野球ファンにとっては、6番以降は「旅館の名前?」あるいは「巡洋艦の名前?」な世界であろう。この私にしたって、シーズン開始当初だったら、これを「二軍のスタメン」と言われても「ああ、糸井や西野が怪我して、調整中なんですな。T-岡田は例の…」と、あっさり信じてしまうに違いない。ここ最近の二軍のクリーンアップは「中島・モレル・ブランコ」だったりするわけで、な、なんだか、め、めまいが。。それはそれで見に行きたいし。

とにかく、失敗を嘆いてもしょうがない。選手をかき集めて優勝=「無理」とわかったのなら、もう振り回されることもない。ここからは来季もいるはずの現有戦力だけを使って「選手をじっくり育てる時期」に入れるわけだ。ファンも腹をくくって、その時期のチームを見守ろう。
ていうか、監督の最近の采配を見て、とっくにファンは「見守り」モードになっているが。ようやくシーズン途中の今になって、福良監督はお墨付きをもらってチームの立て直しを任された、ということなのである。そう理解した方が、早い。もう今年は、目先の勝った負けただけでは、なくて。ここからが、福良監督の仕事の本当の始まり、なのだ。最下位なら、むしろやりやすいかもしれない。

福良淳一。阪急ブレーブス〜オリックス・ブルーウェーブのしっぶいレジェンド。
私にとっては、ブレーブスの遺伝子を持つ監督であるという事実が、ひたすら尊い。伝説の名選手時代、日本ハム・オリッのコーチ時代を通じてその実績と人望は揺るぎなく、それはチーム関係者のお話の端々から、ひしひしと伝わってくる。
なんせイチロー・田口の「お手本」のお方だ。ハムの二軍コーチ時代に糸井、中田、陽を育て上げた、そして一軍コーチとしてチームを日本一に導いたその手腕と慧眼を思う存分発揮してもらえれば、オリッの未来は明るいに決まっているのだ。田口二軍監督とタッグを組んでの、先を見据えたチーム作り。
私は後半戦のオリッの試合も充分楽しんで観れる、と思う。目先の小さいことには目をつぶろう。若手は失敗も多かろう。め、めちゃ、多かろう。でも生温かく見守ろう。




で。ここからは自分のお楽しみなのだが(執筆者の特権!)、来季も見据えた(えらそうに!)「現状戦力の」オリッの後半戦士たちを私なりに、考察してみた。

1(二)西野 #39(26歳)2年目(すでに盤石のレギュラーと認定)
2(遊)安達 #3(28歳)5年目(安達の守備が見れるだけで・・)
3(右)糸井 #7(35歳)13年目(別格の存在・稀有なFA成功例)
4(左)T-岡田 #55(28歳)11年目(今年中に左投手を克服して・・)
5(一)伏見 #23(26歳)4年目(待望久しい長身右打者として期待大)
6(指)奥浪 #61(21歳)3年目(貴重なキャラとして人気者候補No.1)
7(三)大城 #10(23歳)1年目(福良さんに守備を鍛えてもらえば・・)
8(中)駿太#8(23歳)6年目(もっと打てるはず!ポテンシャルは最高レベル)
9(捕)若月#37(21歳)3年目(今年前半の最大収穫!打てる捕手だぜい)

5番以降はいよいよ旅館か料亭の名前みたいだが、若くて将来性抜群。あとはその時点で調子のいい控えをどんどん入れ替えて、外人はまあ代打要員、と。
ピッチャーはといえば、先発要員は金子・西・松葉・東明・ディクソン(日本人扱い)・山崎…と頭数いるんだからやりくりして、もともと質の高い抑え投手がそれなりに調子戻ってくれば…
お。お。お?なんか楽しくなってきたぞー。
あれ?30連勝くらい、簡単にいけるんじゃ? なんて(やっぱりこの人、大丈夫じゃない)

というわけで、後半戦も各自「楽しんで」観戦いたしましょう。
どんな状況でも選手は一生懸命なんだから。

以上!




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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





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