南 郁夫の野球観察日記(42)
オリックス新人選手入団発表記者会見に潜入!

2017年12月18日文/南 郁夫、写真/トモ


新人選手がずらりと並んで、ぎこちなくガッツポーズ。真ん中で監督さんが、作り笑顔っちう。どの球団も毎年毎年、おなじよな集合写真でおなじみの「入団発表記者会見」。
新人選手記者会見って、どんな感じなのか? 新人君たちはどんな顔でプロとしての初仕事をするのか? 興味津々で、12月17日(日)に行われた「オリックス新人選手入団発表記者会見」帝国ホテル大阪の会場に、潜入!


会場にはマスコミとともに、エクストラプレミアム(すごいネーミング!)クラスのファンクラブ会員も参加。テレビカメラもたくさん入り、さすがにプロ野球だわなあ、という華やかな雰囲気の中、西名球団社長、(この日ばかりは仏の)福良監督の紹介に続いて、真新しいユニフォームを着た新人君12名がスポットライトを浴びて次々に登場し、ずらり壇上に勢ぞろいする。

どの顔もかなり、かなーり緊張気味で初々しく、しかしこれだけのカメラ放列を浴びるのは「最初で最後」かもしれず(こらこらこら!)、勝手に「彼らのドラマ」を妄想しながら… 12名それぞれの表情を頭に刻みつけてきた。

記者会見は、MBSのスポーツ実況・金山アナ(どうでもいいけど、実家が「寺」)による代表質問という形で行われ、集合写真撮影会、ファンとの写真撮影会という流れで、粛々と進む。そりゃそういうもんであろうが、びっくりするようなことも起こらず、とんでも発言もなく、淡々と執り行われる「年中行事」という感じであった。それでも新人君の眼差しには無限の希望と決意(と不安)が入り混じり、「がんばれ〜」という親心にさせてくれる。





とはいえ。この中には「未来の」名選手が混じっているかもしれず、長い目で見れば「語り草」になるものを私は見ているのかもしれないのだ。思えば。今年のドラ4の本田君の席に、26年前には「誰も知らない」鈴木一朗君が「ちょこん」と座っていたわけである。そのとき、その後のイチローを誰が想像できたであろう。

さて。せっかく現場に行って聞いてきたのだから、各人の発言を「手短に」下記にまとめてみた。駆け足でどうぞ〜。


ドラ1:田嶋大樹 #29 左投手 JR東日本
「ストレートに自信、勝てる投手になりたい。10勝して新人王に」



ドラ2:鈴木康平(K-鈴木)#30 右投手 日立
「ピンチでのストレートが武器。登録名にあやかって奪三振王に」



ドラ3:福田周平 #4 内野手 NTT東日本
「全力プレイで社会に貢献したい。総合力で勝負」



ドラ4:本田仁海 #46 右投手 湘南高校
「制球力に自信。練習試合でホームランを打たれた清宮と再戦したい」



ドラ5:西村凌 #25 捕手 SUBARU
「同郷の則本投手と対戦したい。今を大事にがんばる」



ドラ6:西浦颯大 #00 外野手 明徳義塾高
「目標はイチローさん。2年目にレギュラーを取る」

ドラ7:廣澤伸哉 #64 内野手 大分商業校
「足と守備に自信。子どもたちが野球を始めるきっかけになるような選手に」

ドラ8:山足達也 #36 内野手 本田鈴鹿
「思い切りの良さと走塁に自信」

育成1:稲富宏樹 #123 捕手 三田松聖高
「売りはスローイング、盗塁を刺すところを見てほしい」

育成2:東晃平 #128 右投手 神戸弘陵高
「柔らかなフォームからのキレに自信。まずは体を作りたい」

育成3:比屋根彰人 #129 内野手 飛龍高
「強肩が売り。投手もできるがサードで勝負、ノリ二世になる」

育成4:木須デソウザフェリペ(フェリペ)#130 捕手 御殿場西高
「初球から打つ積極性とボールの握り返しの速さが売り、城島さんが目標」



ドラ1の田嶋君は社会人での実績も評価も盤石だからか、ひとりだけすでに「オーラ」を放っていた。「10勝で新人王」(つまり今年の山岡くんよりも上!)と言い切るところが頼もしい限り。この田嶋君をはじめほとんどの選手が「目標とする選手は?」の質問には「いない」と答えるところに(9月にインタビューした山岡くんもそうだった)イマドキを感じるも、背番号00で私が注目しているドラ6・西浦くんは「イチロー」と言い切ったところは印象的である。彼には何かムードを感じる。

しかし。この日私がいちばん感銘をウケたのは… 名前を呼ばれて緊張の面持ちで舞台袖から登場したドラ4・本田君が、壇上で待ち構えていたバファローベルが右手をさっと挙げたのを見て、なぜか驚いて立ち止まり、舞台袖に引き下がっていったシーン。「?」と微妙にざわつく場内。うながされて再登場した本田君は、再びベルちゃんが右手を挙げると、急停止。そのとき、私には状況がわかってしまった。ベルちゃんが「ハイタッチ」のために挙げた右手を、「待て」のサインと勘違いしてしまったのである。登場のタイミングを間違えた、と思ったのだ。

不思議そうに首をかしげてベルちゃんを凝視しながらやっと自分の席に着く本田君と、両手で顔を覆って泣くベルちゃん。これが私の(黒い)笑いのツボを押してしまい、その後の選手紹介はなかなか頭に入らなかった。ベルちゃんの仕草がわかりづらいのか(だとすればマレーロ走塁妨害事件につづく、マスコットとして大失態?)、本田君が緊張しすぎていたのか、ハイタッチというものを知らないのか? いつか、本田君をインタビューして真相を聞いてみたい。少なくとも、コーチのサインはしっかり見るタイプということか。

などと楽しいシーンもありながら。私の注目選手はもちろんドラ1、ドラ2両投手と、笑わせてくれたドラ4・本田君。それから、面構えが良かったドラ5・西村君と楽天的な空気を振りまいていた育成のフェリペ君かな。同行専属カメラマンはドラ3の福田君を「ええな」「ええな」と言っていた。理由は不明。また、育成選手は全員が全員、目標に「支配下選手になること」と答えていたのが当たり前で切ないが、本当にそうなってほしいと思った。

とにかく、新人選手入団発表記者会見はつつがなく終了。壇上の12人には、今のところ無限の可能性が広がっているのである。彼らの野球選手としてのドラマを期待して、見守りたい。一般的な評価では、1位:山岡、2位:黒木がいずれも即戦力となってチームに貢献した昨年に引き続き、今年のオリックスのドラフトは大成功らしい。来年も新人君たちが活躍すれば、一気にチーム力がフレッシュに向上するわけである。そういう光景を、我々ファンは望んでおります。

彼らのグラウンドでの健闘を祈りたい。

良いお年を


前回コラム:期末試験の答え

<第1問>プロ野球史上初めて背番号0を付けた選手と所属チーム名を答えなさい
 解答:長嶋清幸 広島カープ

<第2問>プロ野球史上初めて背番号00を付けた選手と所属チーム名を答えなさい
 解答:ジョーンズ 阪神タイガース

<第3問>プロ野球史上初めて背番号02を付けた選手とそのアホな理由を答えなさい
 解答:松永浩美(阪神タイガース時代) 02(おに:鬼)のように強く、と縁起を担いだ

<第4問>オリックス園部選手の驚きの背番号の変遷を時系列を追って列挙しなさい
 44(14年)→ 124 (15〜16年6月)→ 00(16年7月〜)→ 44リターンズ(17年〜)

全問正解者は、単なるベースボールジャンキーです。ご愁傷様〜。







<過去コラム一挙掲載!>

オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。





南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





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