南 郁夫の野球観察日記(16)
女子プロ野球を観に行ってきた <前編>
兵庫ディオーネ、里投手にインタビュー!

2016年10月17日(取材・文/南 郁夫、写真/トモ)



この夏、神戸でのオリックスの試合の際、かわいいユニフォーム姿でチラシを配る、ごく普通の女の子たちの姿があった。なんでも女子プロ野球の選手だそうで「試合を観に来てくださーい」と言う。そのときは何の知識もなかったので「ほーん」としか思わなかったのだが、彼女たちを見て興味はわいた。「こんな普通の女の子たちが、一体どんな野球をするんだろう?」と。

その後、女子野球ワールドカップ5連覇のニュースとその動画で日本の女子野球のレベルの高さに驚き、これは一度実際に観てみたいものだと思っていたが、女子プロ野球の開催球場は阪神間からは行きづらいところばかり。
来年かな?と思っていたところに、今回、K!SPO編集部からきたミッションは「神戸で開催される女子プロ野球を観てこい」 ほいきた!というわけで、久しぶりに「ほっともっとフィールド神戸」に出動。

取材日は10月15日(土)。この日は兵庫ディオーネと京都フローラによる日本女子プロ野球リーグ(以下JWBL)の女王決定戦なのである。初体験でいきなり、頂上決戦すか? とたじろぎつつも、まずは兵庫ディオーネの、というよりは日本のエース・里投手にインタビューさせていただくことに。

里さんは2大会連続で女子野球ワールドカップのMVP、プロ入り後3年連続で奪三振女王、今シーズンはリーグ最多勝を決めている、絶対的な女子プロ野球界のエースなのである。どきどき。


里 綾実(さと あやみ)#18 兵庫ディオーネ
89年生まれ 右投右打 鹿児島県出身 神村学園(女子硬式)ー尚美学園大学(女子硬式)ー13〜JWBL
今シーズン成績:13勝4敗 防御率1.71




−−今や女子球界のエースの里さんですが、どんなきっかけで野球を始められたんですか?

4つ上の兄がいまして。小さい頃は同級生の女の子より兄とその友達と遊びたくて、サッカーや野球をしていました。とにかく体を動かすのが好きで、実は小学校では最初、空手をやってたんです。でも父の転勤で引っ越した先に道場がなかったので、じゃあ野球かな〜と(笑)少年野球チームに入りました。


−−最初からピッチャーだったんですか?

肩が強かったんで、外野に行けと言われたんですけど、ボールが飛んでこなくて退屈なんで(笑)わざとやる気のないとこ見せて(笑)「じゃあピッチャーやってみろや」ていうときに本気出してました(笑)


−−それから野球一筋ですね。女子ということで、続けることに迷いはなかったですか?

高校進学の時に、硬式野球部かソフトポール部か、一番悩みましたね。当時、大学に女子硬式野球部はなかったので、続けていていいのかなあと。ソフトボールなら大学でもできるし、オリンピックという目標もあるし…


−−モチベーションを保つのは大変でしたか?

女子高校野球の全国大会に初めて出たとき、当時5校しかなかったんですけど、それでもこんなに野球やってる女の子がいるんだ! と新鮮な驚きで刺激になったんです。そして高2のときに大学に初めて女子硬式野球部ができ、その大学の2年のときに女子プロ野球ができ、そして女子野球ワールドカップの日本代表になったりと、どんどん上のステップの道が開けて、目標で迷うことはありませんでした。ラッキーでしたね。


−−日本代表でも、JWBLでも盤石のエースです。これからピッチャーとして目指すところはありますか?

ずっと思ってるんですけど…完全試合がしたいです。もちろんチームの勝利優先なんですが、まだ女子で達成した人がいないんで。それか、130キロ出すことかな(笑)


−−極端に四球が少ない(*)ですよね。コントロールは昔からよかったんですか?

小学生の頃、遊ぶ相手がいないときは一人で隣の家の塀に向かってボール投げて遊んでましたから。それでかな(笑)

*今シーズン19試合で与四球は18。無四球試合が4試合。


−−ワールドカップで5連覇と日本は頂点ですが、里さんが感じる「世界」の印象は?

例えばベネズエラの選手の走力とか、他国の選手が持っている潜在能力はすごいですし、日本人なら届かないアウトコースを当てられたりと体格の違いを感じます。次の大会のある2年後にどうなってるかわからないなあ、と思います。


−−プロとしての意識はどんな風にお持ちですか?

プロに入る前はただ野球が上手くなりたいだけでしたが、今は応援してくれるファンの人たちに何らかの形で応えたいと思っています。メディアを通して、例えば親にも試合を見てもらえるんで、お世話になった人に恩返しをしたい、という気持ちでプレイしていますね。


−−マウンドで心がけていることは何ですか?

野手が守りやすいようにリズムよく投げること。そして常にバッターに向かっていく、ということです。そのあたりのことは大学時代の監督・新谷博さん(主に90年代に投手として西武・日本ハムで活躍)に教えていただきました。


−−登板前のお忙しいときに、ありがとうございました。今日、完全試合で決めましょう!

それくらいの気持ちで、がんばります!



里さんはインタビューの受けこたえが丁寧で自信に満ち、さすがプロだなと感じさせる一方で、明るくてさっぱりしていてお茶目な部分も持ち合わせた、非常に魅力的な方であった。
そして、私が言うのもあれだが「頼りになるやつ」と感じた。今シーズンから兵庫ディオーネのキャプテンに指名されているのも、うなづける。インタビュー後、ご自身の野球カードにさらさらっとサインをいただいたのだが、そこには「冷静に熱く!」と記されていた。なるほど。なるほど。




<後編>は、いよいよ、兵庫ディオーネvs京都フローラの女王決定戦プレイボール!




日本女子プロ野球リーグ(JWBL)公式HP
http://www.jwbl.jp




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女子プロ野球を観に行ってきた <後編> この胸にグッとくる感じは…なんだろう?
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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」




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