時計の針は午後11時過ぎ。最後の最後の打者・宗がセカンドゴロに倒れてオリックスがついに、ついに力尽きた瞬間。フィールドやベンチからマウンド付近に転がるように駆け集まった紺と緑のヤクルト選手たちの、熱い涙と白い息。敵地なのでBGM演出もないなか、神戸の夜空に清々しく響き渡る彼らの解き放たれた歓喜の雄叫びはダイレクトに私の胸を打ち、不思議なことに明日の第7戦のチケットも持っていたにも関わらず「悔しい」という感情は、微塵も湧かず。分厚い防寒着の中で精魂尽き果てた神戸のオリッ・ファンたちは思いのほか穏やかな顔で「終わったなあ」とこの光景を見守っていたのだ。連日の大熱戦。目の離せないすごい日本シリーズ。すでにヤクルトの選手全員が心に染み入ってしまっていたからかもしれない。 |