南 郁夫の野球観察日記(2)
グリーンスタジアム神戸に。行こっ!

2016年5月16日(文・写真/南 郁夫)



その野球場の駐車場に、到着する。試合開始の1時間以上も前である。おなじみの外観と照明塔が見えてきただけで、「大のオトナが」すっかり落ち着きを失っている。入場ゲートのスロープを「別に急いでませんけど?」な不自然な顔で駆け上がり、最後は息を切らせて場内に足を踏み入れる。その瞬間に両眼に飛び込んでくる、「グリーンの衝撃」。何度味わっても、この瞬間がたまらない。




その野球場の内部は、美しいグリーンの天然芝が敷き詰められた「公園」。まさに、ボールパークなのだ。青空と芝生と土の、コントラスト。わずかに潮の香りが混じった緑の風が、Tシャツの袖を駆け抜けていく。。そして。芝生の上には練習中のプロ野球選手たち。彼らはまるで夏休みの少年のようにボールをかっ飛ばし、子犬がじゃれあうようにくすくす笑いながら、キャッチボールをする。試合前のこんな平和な光景が、大好きだ。

「ここは天国か?」シューレス・ジョーなら聞くだろう。
とうもろこし畑では、ないけどね。
大人の事情でいろんな名前に変わってきたが、
私にとってこの場所の名前は永遠に、
その名のとおりの「グリーンスタジアム神戸」なのである。

そう。この場所で。イチローが鈴木君だったころから「膨大な」時間を過ごしてきた。ここにいると、いろんな思い出が。そのときどきの肌感覚とともによみがえってくる。

オリックス悲願の地元胴上げを決めた51番のサヨナラヒットがレフト線を切り裂いた瞬間、神戸中の青空にこだました大歓声、それを撮ろうと急降下してきた報道ヘリの爆音と震災の記憶。藤井康夫が消化試合で(秘かに)放ったプロ野球史上唯一の9回裏2アウト3点ビハインドからの「代打逆転満塁ホームラン:お釣りなし」がライトスタンドに突き刺さった「こーん」という音の驚愕と、そのとき降っていた初秋の雨の冷たさ。。えとせとら。えとせとら。。

野球とはしかし。もちろん華々しいシーンだけでは、ない。

ほぼほとんどの時間が、何も起こらない。そして、私が応援しているチームにはかなりの確率で「とほほ」なことが起こってしまう。その「何も起こらなさ」&「とほほ」を愛でるのが野球観戦の奥義。。とはいえ、ファンとて哲学者ではない。さすがに辛いときもある。野球場での観戦は、チャンネルを変えるわけにはいかない。が、自然の中に美しくたたずむグリーンスタジアムが見せてくれる「野球背景」が、それを救ってくれるのだ。




たとえば。

ナイトゲーム序盤の試合進行とともに刻々と変わる、空の色。(夕焼け色に染まった野球場ほど、幻想的な光景はない)ファンのため息とともに打ちあがった凡フライの向こうに見える、お月さま。一二塁間を前傾姿勢で守る、ハト。必死の形相で顔前の蛾を追い払う、わりとヒマそうな外野手。変な走り方の、グラウンドボーイ。スタンドから舞い降りた白いビニール袋をすばやく後ろポケットに処理して喝采を浴びる、審判。。

まだまだ続く。

休憩中のバイトのような顔でブルペンから戦況を並んで見つめる、控え投手たち。二階スタンドで異様な頻度でファールボールを拾っては、にこりともせずにカバンにしまいこむ、謎の少年。オリックスがチャンスを逃すたびに「あほらしっ」と叫ぶ、おじいちゃん。顔に当たる、にわか雨。ほほをなでる、甘い風。試合とは無関係に遠くに瞬く、街の灯り。。ああ。

そんなこんなをぜんぶ含めての、野球観戦。野球場って、こうでなくっちゃでしょ? これこそが、何度もこの球場に足を運ぶ理由なのだ。

ぜひ。グリーンスタジアム神戸っていうか、正式?には「ほっともっとフィールド神戸」に足を運んでほしい(開催試合、少ないけど)。そして、世事を忘れてゆったりその時間を過ごしてほしい。芝生の匂いを胸に吸い込んで、物思いにでもふけってほしい。勝った負けたではない、五感に残る本当の野球の思い出を作ってほしい。もちろん、素晴らしいプレイも見たいし、勝ってもほしいけど。




さて。先日も(5月14日(土)vsソフトバンク)、その球場の「お気に入り」の二階席で、大好きな「野球の光景」を楽しみながら、さわやかな空気と花火が演出する夏の予感にひたってきた、私。それだけで、十分に幸福だったのだが。

延長10回。今シーズン初めて一軍に上がってきたベテラン・中村がサヨナラヒットを打ったのだ。直前まで二軍のグラウンドにいたのに。申し訳ないがあまり期待していなかった満員の観客席は、まさにどんがらがっしゃん状態。ヒーローインタビューでいつもの素っ頓狂な顔して「こんなたくさんのお客さんの前で…」なんて言っている、中村。うーん、ドラマだ。

こんな夜は。いつまでも球場で夜風に当たっていたい。そして、照明が落ちて真っ暗になるまで、芝生を見つめていたい。係員に「あのなあ。。」という顔で穏便に追い出されるまで。

つまり私は。
「グリーンスタジアム神戸」のファンなのだ。




オリックス・バファローズHP
http://www.buffaloes.co.jp/




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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





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