注目の新刊「歩く、走る! のばせ健康寿命」 
栄養学と運動生理学で考える「走る、アンチエイジング」

2016年4月20日(三一書房)

 39歳でクモ閣下出血で倒れ、リハビリで始めたランニングがきっかけで41歳でフルマラソンを完走。以後、マラソンに挑戦を続けて、2015年、55歳で自己ベストの3時間25分52秒を記録。栄養学の最前線にいる著者が、安直な健康法やアンチエイジングに警鐘を鳴らし、自らの経験と学問的見地から、運動と栄養をベースにした健康のための実践的な理論を提唱する。
 要介護にならないために何が必要なのか? 運動によって得られる脳への影響や、食と栄養についての考え方、そして、人生の終盤=クライマックスステージと位置づけ、そのために必要な心構えと生活習慣を「走る」事を中心にしたアンチエイジング法として説く。
 健康寿命をのばし、長くなった人生の終盤を輝かせ、若々しくポジティブに生きるためのノウハウの数々。走る楽しさに目覚めた著者の体験を綴ったコラムと、6ヶ月フルマラソン完走プログラムも収録。

・自分の寿命を「仮決め」してみる
・定年前に「仕事人間」を卒業する
・お金は生きているうちに使ってしまおう
・50歳を過ぎたら電車では座らない
・身体にいい食べ物、はアテにならない
・認知症は運動で先のばしできる!?
・高齢者の食生活にヒントがある
・誰でもできる「歩く」からフルマラソン完走まで




ポジティブに「老後」と向き合うためのヒント

 最近、よく耳にするようになった健康寿命という言葉であるが、ますます高齢化の進むわが国にとっても、個人にとっても、その延伸は切実な問題だ。どうしてもネガティブに考えてしまいがちなこの問題について、「老後」を人生のクライマックスステージ、と位置づけ、人生の下山を楽しむための健康づくりをする、という発想は、著者と年齢の近い私(五十代後半)にとって、ポジティブに「老後」と向き合うヒントである。
 健康に類する本は山のようにあるが、○○するだけ、○○を食べるだけ……のような安直な内容のものは飛びつきやすい反面、長く続けている人も少ないのではなかろうか。健康は、運動、栄養、休息のバランスの上に成り立つものであり、逆に何か一つの要因が健康や健康寿命の延伸に寄与するという事実を科学的に証明することは極めて難しい、と著者は語る。
 また、著者の専門である栄養学の世界では、「身体にいい」という学説がしばしば覆されるのが当たり前であり、現段階でほぼ確実に「身体にいい」と言えるのは、運動することである、と結論付けるとともに、ひところ流行った「運動は身体に悪い」という活性酸素の発生を理由付けにした理論に対してもきっちりと否定している。その上で、「何故身体にいいのか」の何故の部分を最新の学説でかなり専門的に分析している。
 科学者として、極めて誠実に考察された内容であるが、スポーツ愛好者の目から見ると、仕事人間だった著者がクモ膜下出血に倒れて一命をとりとめ、リハビリでジョギングを始めてから、マラソンへの挑戦を契機に走ることにのめり込んでいった心の軌跡が非常に興味深く、小学生の娘とランニングして完敗〜フルマラソンチャレンジ〜記録への挑戦と、時系列で収録されたエッセイ風のコラムにも共感するところが多かった。




「歩く、走る! のばせ健康寿命」 
栄養学と運動生理学で考える「走る、アンチエイジング」
太田篤胤 著
ソフトカバー単行本 212ページ 
定価1400円+税
発行/株式会社E-lock.planning
発売/株式会社三一書房
http://www.amazon.co.jp/dp/4380169006

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