偉大なる野球妄想漫画家・水島新司さんが亡くなった。
「ドカベン」「野球狂の詩」「あぶさん」の世界がリアルタイムで並行展開していた昭和世代の脳内では、水島漫画は現実の野球とほぼ完全に混濁してしまっている。記憶の中では、明訓高校や東京メッツはどう考えても実在していたとしか思えないのである。それほどのリアリティと熱量、野球愛が全盛期の水島漫画にはたっぷり詰め込められており、つまらない現実の試合をテレビで見るくらいなら水島漫画を読んでいる方がよほど面白かった、そんな時代があったのである。
各シリーズの豊富なキャラクター、緻密な展開、野球を奥深く知らないと描けないデティール、後年それらのキャラを成長させてフュージョンさせていく展開…考えてみれば、水島新司は「ひとりマーベル」ではないか!地球なんか救わないけど、野球を救ってきたのである。当時の野球人気をかなりの部分で支えてきたという事実は、関係者も含めて誰もが認めざるを得ないだろう。そこには濃密に昭和のメンタリティが漂ってはいるのだが…。 |