南 郁夫の野球観察日記(37)
「野球場の人びと」

2017年9月20日(文・写真/南 郁夫)

祝!ソフトバンク優勝セール、そしてオリックスは、Bクラスの中で「ほぼ」優勝(セールなし) 優勝って??
今年のオリックスはずいぶん変則日程で9月は長い長いロードに出てしまい、もうすぐ野球シーズンも終わるというのに、神戸ではもう生で試合も見れない。私としては「終息感」満点な、秋である。んー、去年より順位はマシだけど、実際どうだったんでしょか? 今年のオリッてば。


まあそれでも。たくさんのファンが今年も球場につめかけたわけで。いつ球場に行っても昔の西宮球場や大阪球場のように「がんらがら」ということはない、昨今。パ・リーグなのに! 球団関係者でもないが、ありがたい話である。とはいえ、オリッの場合はふらっと行ってチケットがないなんてこともあり得ない。超満員の球場が熱狂してるってこともない。そこらがちょうど、Bクラスな感じなのだ。

観察者としては、そんなゆるい球場を今年ものんびり楽しめた。戦況がどうあれ、球場の光景そのものも大切な観察対象だから。今回は視点をグラウンドではなく周辺のファンに向けて、そんなスタンド光景あれこれを点描してみたい。ただし「おもろっ」と思ったらバシャッと撮る観察者自身のスマホ画像なので、写真は臨場感あふれる「ぶっれぶれ」である。ご容赦を。


■席が見つからない人
帰巣本能が皆無、という人がいる。結構いる。私も「田舎の雑居ビル」みたいな「ほっともっと」の立体駐車場で延々と自分の車を探すことがある。そういう人はいったん座った席を立って売店などに行った後、自分の席に帰ってこれない確率が高い。

係員のようにグラウンドに背を向け通路に突っ立って、緊迫した顔で両手に飲み物を持って首をセンサーのように回転させスタンドの人々を順に凝視している人が、そうである。目の前でこれをやられると、試合は見えないし、じっと見つめられるしで、気まずさマックス。「どっか行け!」と思うが、事情は一目瞭然なので… 許す。

席を離れる前に、周囲の観客の特徴を頭に叩き込むことをお勧めする。私は「前がハ×!」と認識して席を立ち、帰ってきたらそこら一帯「×ゲ」だらけで、固まったことがあるが。




■ややこしいものを食べる人
球場で売ってる食べ物のコスパ問題と思うが、コンビニ食品や手料理を持参する人は多い。しかし。球場には球場にふさわしい食べ物というものがある。食べやすくて、球場らしい食べ物が。妙に所帯くさいものは雰囲気を壊すのでやめたほうがいい。特に、コンビニ食品でやめたほうがいいのは、「ざるそば」や「冷やし中華」の類である。

机もない環境で、膝の上でフタをベコっと開け、分類された具材を慎重にビニールから取り出して麺に乗せようと思ったら、麺の上にさらに仕切りのビニールがかかっているのでそれを引きずり出して、ダシを細心の注意で開けて投入して…の複雑な過程で、たいていの人は「エラー」を犯す。下手くそな内野陣が塁間に挟んだ走者をアウトにできないように。



特に強風吹きすさぶ日の「ほっともっと」でこの作業をやると、どえらいことになる。私は「ざるそば」の刻み海苔がジェット風船のように周囲一帯に吹き飛んだのを見た。その1枚が風下のおっさんの汗をかいた首筋にピタッと貼りつき、おっさんがビクッとして首に手をやるとそこには… SFホラーである。

食べ物関係で今まで見た中で最大の衝撃映像といえば。「保存容器に汁そばのようなものを入れて持ってきたのだが、ハシを忘れてしまった人」というロッテファンの行動である。そんなもん持ってくんなちう話であるが。フタをとったタッパーを両手で持ってしばらくどうしようか考えていた彼は、次の瞬間、意を決してすぼめた口を突っ込み「じゅるじゅる、じゅるじゅる」と吸引し始めたのである。げげげっ。
人間が人間でなくなる瞬間を見てしまった。売店で割り箸をゲットするくらいの機転はないのか! とにかく、球場でややこしいものは食べないことだ。





■ポンタな人びと
最近のプロ野球チームはいろんなものとコラボするが(ロッテの魚!)、オリッと「ポンタ」のコラボは結構有名となり定着したようである。Tシャツなどのグッズを身につける人も多いが、一番人気は「バファローズボンタぬいぐるみ」であろう。発売してはすぐ完売、というこのぬいぐるみ。手に入れた人の思い入れも相当なもので、球場にはまるで愛犬のように「バファローズポンタ」を連れているファンの姿を見かける。



ちゃんと試合が見えるように?ポンタを掲げる姿も可愛らしいが、オリッがボロ負けしてると胸に抱きしめるなど、癒し効果もありそうである。私も欲しい。退屈な試合も楽しくなりそうだ。ポンタに向かって「オリッの下位打線、戦闘能力ゼロ以下だよね」などと話しかけ出すと、怖いが。




■飲み会な人びと
試合なんて単なる背景。野球を眺めながら宴会と洒落込む人たちが多いのが、特に「ほっともっと」の特徴である。野外だし。小学生や市民対象の優待チケット配布が多いからか、子どもを連れてきたお母さんたちがビール飲んで井戸端会議してたり、ご老人の団体が酒盛りとかいう光景があちこちで見られて、なごむ。お母さんたちは異様に古い応援グッズ(小川のタオルとか)を持っていたりして、「BW時代の元祖オリ姫か!」と思わせて興味深い。



ご老人の団体は特に元気で、2階スタンドで強引に「輪」になって、各自持ち寄った「家のおかず」を回しながら男女入り乱れてわあわあきゃあきゃあの、合コンめいたご発展ぶり。「輪」になってるわけだから、ずうっとグラウンドに背を向けてる人もいるわけだが、おしゃべり重視で気にしない、気にしない。
この人たちは5回裏終了後の「花火」が終わったら、「眠い」「眠い」と言いながらぞろぞろ帰っていくのがいつものパターンで、「ほっともっと」では試合展開にきっぱり関係なく、6回開始時にずいぶんとお客が減っている、というのは誰でも知っている事実なのである。


■寝ている人
いつでも満員で応援の熱気あふれる「どこぞ」の球場なら、あり得ないが。「ほっともっと」2階スタンドでは結構、ガチで寝ている人がいる。試合が退屈だから、とかそういう次元ではなく、ただ単に寝ているのだ。寝に来ているのかもしれない。「ほっともっと」は夏でも涼しいし、2階スタンドは寝てても邪魔にならないくらいの「入り」な日も多いので、ぜひ休憩にお越しください〜。



でも。熟睡している人が起きるときに唐突に「んおあっ」とか叫ぶの、びっくりするのでやめてほしい。

では私も。もう今年は試合のない「ほっともっと」の大好きな2階スタンドで「幻の球音」を聞きながら、うとうとうと。









<過去コラム一挙掲載!>

オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。





南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





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