南 郁夫の野球観察日記(30)
チームを支える人たち オリックス広報担当・仁藤さん

2017年5月20日(取材・文/南 郁夫)


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−−球団職員の話は、戦力外通告と同時にあったんですか?

「トライアウトを受けないならこれからも一緒にやろう、と言っていただきました。ありがたかったですね。もうプレーはできないけど、これからもみんなと一緒に戦えるんだと思って、本当にうれしかったです。感謝しかないですね」


−−スコアラー、マネージャーを経て、昨年から広報です。どんなお仕事内容ですか?

「広報もチームでやっているわけですが、今年の僕の役割は、球場に来て取材希望などのメールチェックとアテンド、試合前は練習の手伝い、試合が始まるとベンチに入り、談話を取ったりスコアをつけたり… 試合が終わるとまたインタビューなどの仕切り、ですね。何が起こるかわからないし、広報と言ってもマネージャー的な要素も強いです」



−−どんな思いで、広報というお仕事をされてますか?

「ちょうど選手時代にプライベートでも仲の良かった同年代(T-岡田選手や伊藤選手など)が、いま中心選手になっています。それがうれしいですし、一緒に戦っているつもりです。若い選手たちにも「がんばれー」という気持ちで(笑)応援する気持ちでいっぱいですね」


−−いちばん、やり甲斐を感じるのはどういうときでしょう?

「それはもちろん、チームが勝って取材が増えて、選手たちがメディアにたくさん取り上げられるときです」


−−では、夢はもちろん?

「チームの一員として、優勝したいですねえ。本当に。そして、山ほど来る取材依頼をさばきたいですね(笑)」


−−今年のベンチは雰囲気がいいように見えますが・・

「はい。カバーしあえてますね。誰かがミスしても、みんながカバー、カバーと声を出しています」


−−広報という仕事に、どんなビジョンをお持ちですか?

「チームは、人だと思うんです。いい選手がいて、いい監督・コーチがいて、いいスタッフがいて。オリックスはそんなチームです。そんな人たちと、喜びを分かち合いたいですね。僕はみんなが大好きなんで。人間的にもいい選手ばっかりいますから、そういう面をもっとファンの皆さんに知ってもらいたい。もっと選手たちを好きになってもらえるように、そういう発信がしていきたいですね」


−−最後に。仁藤さんは野球のどんなところが好きですか?

「何が起こるか、わからないところですね」


ありがとうございました! 今後ともよろしくお願いします





ちょうどインタビュー中に、オリックスの選手たちがグラウンドに出てきてキャッチボールを始めた。そんな彼らの姿を見ながら「選手たちが大好きなんです」とつぶやいた彼の言葉に、新鮮な驚きがあった。ご自身も同年代の元選手である。少しは複雑な感情があるのでは? というこちらの邪推が恥ずかしくなるほど、仁藤さんのまっすぐな眼差しからは、野球への、オリックスへの愛が伝わってきたのだ。

文字に起こして整理してみるとインタビューっぽいが、顔見知り(のつもり)の仁藤さんへの取材はほとんど「雑談」の形で行われた。「なんか…普通にしゃべっちゃってますけど、これで大丈夫なんですか?」と真剣に聞いてくれる仁藤さんは、本当に好青年である。わかってはいたけど。恩人と慕うスカウトの牧田さんをはじめ、彼がいろんな人に可愛がられるのがよくわかる。

とはいえ、穏やかな口調で語られた選手時代の話の内容は、厳しいものだ。特に、まだ20歳の将来を嘱望された投手を襲った(現在も治療中である)病気は、想像もつかない試練だったろう。その無念を思うと、心が痛む。しかし、彼は腐ることなくまっすぐ戦い、力尽きた。そして、それをちゃんと見ていた周囲の人たちがいて、仁藤さんは今でも選手とともに戦っているのである。

彼が言うように、オリックスにはいい選手がいて、いい監督・コーチがいて、いいスタッフがいる。仁藤さんをはじめ、みんな本当に「いい人間」である。取材していると、それを痛感する。彼らが歓喜を爆発させる瞬間を信じて、これからも応援を続けたいと思う。

野球は、何が起こるか、わからないから。

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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





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