南 郁夫の野球観察日記(15)
チームを支える人たち オリックスブルペン担当・別府さん

2016年10月5日(取材・文/南 郁夫)



インタビュー後、別府さんは早出特打ちのバッピ(打撃投手)を頼まれているということで、すぐマウンドに上がり、若月や園部、大城相手に力強いボールを投げ込んでいた。身のこなしが、実に若い。お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

大ベテランのブルペン捕手、というと何だか頑固な「岩」のようなイメージを持っていたのだが、別府さんは穏やかで温かい方であった。その若々しい口調からは、野球とチームを愛する気持ちがひしひしと伝わってきた。昭和な私としては、お話を伺いながら、別府さんの現役時代の阪急・ブレーブスのユニフォーム姿をまざまざと想像してしまい、「いかにも阪急のベンチにいそうな…」ご容貌に内心の喜びを禁じえなかったのである。

現役を引退された年が、オリックス元年。それから27年、別府さんはオリックスの投手陣をずっと見守ってきた。その間、数かぎりない若い投手たちがブルペンにやって来て、そしていずれ去っていったことを思うと、なんだか遠い目になる。試合前の外野フィールドで和気あいあいと練習している投手陣のひとりひとりが、愛おしくなる。

そして、その全てを知る別府さんが、なんだかブルペンという名の寮の「寮長」のように思えてくる。別府さんといい、前回登場の打撃投手・山田さんといい、若い選手たちを語る口調が慈愛に満ちていて、そこにほっこりするのだ。
山田さんは風格があって「親父さん」だが、別府さんは大好きな「親戚のおじさん」て感じかな?(個人の感想です)
取材の次の日は小松投手の引退試合だったのだが、最後に「よしよし」という感じで小松投手をいたわるように抱きしめる別府さんの姿が、テレビに映っていた。

ブルペンにそんな別府さんがいるからこそ、ベンチは信用して投手交代をコールできる。実際、今年もオリックス救援陣のパフォーマンスはきわめて高かった。それを支えているのが、別府さんの足掛け35年!の捕手経験からくる洞察力と、キャッチング技術である。ブルペン捕手は決して決して、「壁」などではない。投手陣の心の支えであるとともに、鋭い観察者であり保守責任者なのだ。別府さんのお話で、また野球の深さを感じさせていただいた。

試合中、ベンチから離れていつも一緒にいるブルペン陣には、先発陣、野手陣とはまた異なった独特の連帯感が感じられる。
今度(もう来年か…)ブルペンの見える神戸の試合では、ぜひそこらを観察していただきたい。

そこにはいつも、投手陣を穏やかに見守る、ブルペン「寮長」の別府さんがおられるから。







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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





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